Topics
Report

ZARA運営元のインディテックスが低価格帯ブランド「Lefties」を拡大強化  「SHEIN」に対抗【EU最新小売トレンドレポート】

高嶋 一行|Kazuyuki Takashima
編集部により一部編集
執筆者

 「ZARA(ザラ)」 などを展開するグローバル最大手アパレルメーカーのインディテックスグループは、中国発の低価格帯ブランド「SHEIN(シーイン)」に対抗するため、低価格帯ブランド「Lefties(レフティーズ)」の拡大を計画しています。

 「Lefties」はZ世代をターゲットにした低価格ブランドで、現在はスペイン、ポルトガル、メキシコ、エジプト、ルーマニア、サウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦、イスラエルなど16カ国に店舗を展開しています(日本未上陸)。本拠地スペインでは25店舗を展開しており、顧客数は2019年の約350万人から2023年には500万人へと右肩上がりに増加。これは、市場調査会社Kantar(カンター)社によると、「SHEIN」の520万人に次ぐ規模となっているといいます。

「Lefties」公式オンラインサイト

 

 「Lefteis」のアイテム例を挙げると、3.99ユーロ(約650円)のTシャツ、5.99ユーロ(約960円)のハンドバッグ、7.99ユーロ(約 1,300円)のドレス、17.99ユーロ(約2,900円)のデニムなど、安価でトレンド感のある商品を展開。また、レディース、メンズに限らず、ティーン、キッズ、ベビー、新生児向けと幅広いカテゴリを設けています。

新生児~ティーンまでと子供向けカテゴリが特に充実している(「Lefties」公式サイトより)

マイクロインフルエンサーを多用

 「Lefties」はSNSマーケティングにおいても「SHEIN」と同様の戦略をとっており、「Instagram」と「TikTok」で“マイクロインフルエンサー(注)”を積極的に起用し、いわゆるアンバサダーマーケティングに注力しています。現在、「Instagram」のフォロワー数は約97.3万人、「TikTok」は13.5万人。いずれもハッシュタグ「#inlefties」を付けての投稿を積極的に促しており、「Instagram」ではインフルエンサーを中心とした約7,000を超える投稿を獲得しています。


(注)マイクロインフルエンサーとは、フォロワー数が1~10万人程のインフルエンサー。フォロワー数がそこまで多くないことでファンとの積極的なコミュニケーションや高エンゲージメントが得られることがメリット。

 

「Lefties」の公式「Instagram」。 
フォロワー数は97.3万人(2024年4月現在)公式「Instagram」@leftiesofficialより)

グローバルファストファッション2強の競争激化

 「Lefties」は、もともとは「ZARA」の売れ残り商品などを展開するアウトレットストアとして20年以上前にスタートしたブランドです。競合である、イギリスを中心に展開する同価格帯のファストファッションブランド「PRIMARK(プライマーク)」はオンライン配送を設けておらず、店舗受け取りのみ。また、「SHEIN」は地域によっては注文から配達まで 10日以上かかることが多いです。その反面、「Lefties」はオンラインショッピングのサービスや実店舗が充実しているため、その点で競合ブランドとの差別化を図る狙いです。

「Lefties」のサウジアラビア旗艦店(credit : Fashion Network)

 

 インディテックスグループにおいては、「ZARA」が高価格帯ファストファッションとして世界的な地位を獲得することに成功しています。その反面、「ZARA」が同社の利益を牽引する一方で、近年のインフレによる物価高にともない、同社の本拠地スペインだけでなくポルトガルでは「Lefties」のユーザーが急拡大しています。このような消費背景を受け、同社は「ZARA」では獲得しえないターゲット層に向けてサービスを展開できるとして「Lefteis」の拡大の強化を発表。今後はインディテックスグループと「SHEIN」による次世代の2大ファストファッション競争が激化していきそうです。

 


参照:
https://www.lefties.com/
https://uk.fashionnetwork.com/news/Zara-owner-inditex-expands-bargain-brand-to-counter-shein,1607805.html

執筆者

  • 高嶋 一行|KAZUYUKI TAKASHIMA

    Showcase Tokyo 代表・在英ライター|AILメディアパートナー

    ファッション専門学校卒業後、渡英。「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」にてデザインアシストを経験。現在は英国を拠点に日本ブランドの海外セールスを行うエージェント「ShowcaseTokyo」を運営(https://www.showcasetokyo.co.uk)。 東京ファッションウィーク参加ブランドなど、日本のデザイナーズブランドの海外進出や新規取引先開拓の支援を行っている。 パリファッションウィーク期間では年4回それぞれのシーズンに営業担当する日本ブランドと共に参加。バイヤー向けの展示会を開き、ヨーロッパを中心に海外のお店やバイヤーとの取引を進める。