Topics
Report

米ファッション市場 店舗面積縮小&収益化向上の機運 ファッションレンタル「Nuuly」は売上5億ドル目標 フットウェア「Rothy’s」は店舗戦略が奏功

ケルビン・アウ|AILメディアパートナー
AIL編集部により一部編集
執筆者

「Nuuly」ついに年間黒字達成、2025年は売上5億ドルを目指す

 米大手アパレルチェーン「URBAN OUTFITTERS(アーバン・アウトフィッターズ)」傘下のファッションレンタルサブスクリプション・リセールマーケットプレイスを展開する「Nuuly(ヌーリー)」が好調です。


関連記事:設立4年で黒字化達成! 米レンタルサブスクリプション「Nuuly(ヌーリー)」の成功モデル【編集部厳選:週間ホットトピック】

 

「Nuuly」公式オンラインサイト

 

 ブランド設立4年目となる2023年の第三四半期時点で黒字転換に成功した同社は、その後も順調に業績を伸ばし、2024年度は初の年間黒字を達成し3.78億ドル(約566億円)の売上を記録。最新の2025年2月の決算発表によると、同サービスは前年比56%増の四半期売上1.13億ドル(約170億円)を達成し、有料会員数が53%増加するなど好調な業績推移を遂げています。同社は2025年度の売上目標を5億ドル(約750億円)に設定しており、プレジデントのDave Hayne(デイブ・ヘイン)氏はその達成可能性に自信を示しています。

 一方、Urban Outfitters Incグループ全体の動きにおいて、小売部門では、主力3ブランドの戦略転換を進行。主力ブランドの一つである「URBAN OUTFITTERS」では、店舗数は維持しつつも、店舗面積を平均6.000~8,000平方フィートに縮小する店舗改革を加速し、採算性の低い店舗を閉鎖しています。卸売部門も26%増の6,900万ドルの売上を記録するなど、グループ全体の純利益は前年比2倍超の1億2,030万ドルに達しました。

 

「Nuuly」では、「URBAN OUTFITTERS」「Anthropologie」「Free People」など
Urban Outfitters Incグループの主要ブランドの他、約100ブランドがレンタル可能
公式オンラインサイトより)

 

 財務改善に繋がった主な要因は、粗利益率が32.3%まで上昇したことにあります。「Anthropologie(アンソロポロジー)」や「Free People(フリーピープル)」といった他の主力ブランドも安定した成長でグループ業績を牽引しています。「値引き率抑制策」が奏功し、Urban Outfitters IncグループCEOのRichard Hayne(リチャード・ヘイン)氏は、「持続可能なファッション需要が成長を牽引している」と分析。また、ウェルズ・ファーゴ証券は同社にとって“「Nuuly」が新たな収益柱として定着した”と評価しています。

 今後はサブスクリプションモデルの拡大とアーバンブランドの再建が焦点となります。人口動態の変化に対応した店舗戦略と相まって、デジタル時代の新たな小売モデル確立を目指す構えです。市場関係者は「循環型経済の潮流を捉えたビジネス転換が成功例となった」との評価を示しています。

「Rothy’s」店舗収益が好調、売上が2億ドルの大台を突破

 米国サンフランシスコ発のフットウェアブランド「Rothy’s(ロシーズ)」は、2024年度の売上高が2億1,100万ドル(約315億円・前年比17%増)に達し、“実店舗戦略が成長の原動力となった”と発表しました。


関連記事:「Rothy’s(ロシーズ)」にみるリアルイベントの変化 顧客エンゲージメントも進化が求められる時代に【Coffee Talk from NYC Vol.18】

 

フラットシューズが人気の「Rothy’s」(公式オンラインサイトより)

 

 「Rothy’s」では、既存店売上高を20%増加させ、9店舗を新規出店(計26店舗)したことで実店舗ネットワークを50%拡大。同社プレジデントのDayna Quanbeck(デイナ・クアンベック)氏は、「採算性の高い店舗戦略」を強調し、平均約145平方メートルの店舗面積が最適だと分析しています。2019年に破綻した「Charlotte Russe(シャーロット)」(当時600店舗)の経験を踏まえ(注)、年間5~10店舗の慎重な出店ペースを維持しています。


(注)「Rothy’s」CEOのJenny Ming(ジェニー・ミン)氏は、2009年~2019年まで米アパレル小売チェーン「Charlotte Russe」の社長兼CEOを務めた。彼女は過去にもGapグループ傘下の「Old Navy(オールド・ネイビー)」で創業メンバーとして初代社長を務めている。

 

 同社のニューヨーク5番街の旗艦店では、再生プラスチックボトル数表示カウンターや、サステナブル素材のシャンデリアを導入しブランドストーリーの可視化に成功しました。また、ナショナルリサイクルデーでは「Hydro Flask(ハイドロ・フラスク)」と連携し、プラスチックボトルの回収キャンペーンを実施しました。

フラットアイアンの「Rothy’s」旗艦店(134 5th Ave NY)
ペットボトル回収などさまざまな最新の取り組みを行う

 

ワシントンD.C.圏の「Rothy’s」Tysons Corner Center(タイソンズ・コーナー・センター)店
(「Rothy’s」公式オンラインサイト店舗一覧より)

 

 販売チャネルでは、ECを中心に、「Amazon」や米大手百貨店の「Nordstrom(ノードストローム)」などで卸売り戦略を強化。また、2025年にはヒューストン進出を含めた米国南部市場拡大を計画しています。ワシントンD.C.圏で2店舗展開した結果、市場全体が62%拡大する相乗効果が確認されています。米市場調査企業Circana(サーカナ)は「店舗とオンラインのバランスがブランド認知を相乗的に高める」と評価しました。