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“絶対的王者”アリババグループを超えた! Temu運営元、拼多多グループの驚異的な成長【編集部厳選:週間ホットトピック】

ケルビン・アウ
AILメディアパートナー
執筆者

小売、EC、マーケティング、テック、Web3カテゴリーを中心に、今週注目を浴びた国内外の最旬情報をお届けします。

カテゴリー:EC、マーケティング、越境

 2023年11月30日、海外の複数メディアの報道によると、数年前に経営の最前線から身を引いたアリババグループの創業者であるJack Ma(ジャック・マー)氏が同社の社内向けのフォーラムに姿を見せ、この異例ともいえる登場に注目が集まりました。

 Ma氏のスピーチ内容は、ライバル企業である拼多多グループ(Pinduoduo Group、ピンドウドウグループ)に関するもので、拼多多グループがアリババグループを差し置きマーケットシェアを奪ったという戦略を評価した上で、今後のアリババグループの成長性を危惧し、従業員に対して速やかな「軌道修正」を求めたといいます。

 その背景には、近年アプリのダウンロード数が急増し世界中でユーザー利用が広まっている中国発の格安越境ECモール「Temu(テームー)」の存在があります。この「Temu」の運営元となるのが拼多多グループで、11月28日には同グループの時価総額が同じく中国発でEC・ITプラットフォームの絶対的王者といわれるアリババグループを一時的に超えました。その後、12月10時点では、拼多多グループの時価総額は約27兆円、アリババグループはやや回復し約29兆円で落ち着いています。

 

アリババグループと拼多多グループの株価収益率の推移比較
赤線:アリババグループ/緑線:拼多多グループ
2023年9月下旬から拼多多グループの株価収益率がすでにアリババグループを上回りつつある
(参照: アリババグループと拼多多グループの株価収益率の推移

 

 ここで、Jack Ma氏を再び表舞台に引き戻すことになったライバル企業の拼多多グループ、そしてその傘下の越境ECモール「Temu(テームー)」について解説していきます。

 まず中国には、ECプラットフォームの「御三家」とよばれる大手IT集団が存在します。企業の時価総額の順に、「天猫、Tmall(Tモール)」などを運営するアリババグループ、「JD.COM」を運営する京東(ジンドン)集団、そして「Pinduoduo(拼多多)」「Temu」を運営する拼多多グループです。

 拼多多グループは中でも最も若く、2015年に上海で設立されたECモールです。農村部など開発途上の中国地方都市のユーザーをメインのターゲットとし、共同購入に特化したビジネスモデルにより一般ユーザーでも卸価格に近い「激安価格」で食品や日用品などの購入が可能となる、ここ数年で急成長しているECモールです。2020年の時点で「Pinduoduo」のユーザー数はすでに”絶対的王者”アリババグループ傘下のTモールを超えていました。

 
「Temu」の紹介動画(YouTube公式アカウントより)

 

 2023年11月28日、拼多多グループが発表した最新の決済報告では、2023年7~9月の期間の売上高は前年同期と比べ94%増の約688億4000万人民元(約1兆4500億円)、純利益は47%増の約155億元(約3300億円)と大幅な増収増益となりました。中国国内事業は堅調で、なによりグループ売上全体をけん引している存在が2022年2月にスタートした新事業である越境ECモール「Temu」です。

 アプリ計測プラットフォーム「data.ai」のデータによると、iOSとアンドロイドの合算で、米国におけるショッピングアプリのカテゴリでは、2022年の11月から「Temu」が「Amazon(アマゾン)」「SHEIN(シーイン)」を押さえて最もダウンロードされたアプリとなりました。

 少し遡り、2023年9月の時点では「Temu」の最新累計ダウンロード数は4.5億を突破、その約4割を占めるユーザーはメインマーケットである米国、続いて英国、そのほかEU、中東、アジアなどと続き、世界47か国でユーザー数が順調に伸びています。日本においては、「Temu」は上陸からわずか4か月でダウンロード数が400万を突破しました。

 

米国では、2022年11月から「Temu」がそれまで2トップだった「Amazon」「SHEIN」を抜いて最多ダウンロードに(参照:data.ai社資料

 

 「Temu」の急成長の中核をなすのは多彩な商品ラインアップと低価格設定で、さらには、頻繁なタイムセールの実施を徹底することにより、節約志向が高く価格に敏感なターゲットユーザーを確実に獲得できたといえます。

 この点に関しては、中国発のライバルアプリ「SHEIN」と同じですが、「Temu」独自の戦略としては、買い物をしなくても、アプリ上でさまざまなミニゲームをクリアすることで、買い物で使えるクーポン券やポイントが得られる点が挙げられます。ユーザーの購買意欲やモチベーションを維持させるような仕掛けが同社のマーケティング戦略に組み込まれています。さらにここ数年の世界的なインフレの社会背景もあり、いくつかの追い風が好じて同社の成長をさらに促進させたと言えるでしょう。

 


参照:
https://www.ft.com/content/0b3348bd-eae6-4b0e-a177-48b21c2141e6
https://www.msn.com/en-us/money/news/pinduoduo-overtakes-alibaba-in-market-cap-for-first-time-jack-ma-declares-the-era-of-ai-e-commerce-has-just-begun/ar-AA1kQYUK