Topics
Report

Ulta Beauty、Visaがリワードプログラムを刷新 ロイヤル顧客のエンゲージメントに注力【編集部厳選:ホットトピック】

ケルビン・アウ
AILメディアパートナー
執筆者

小売、EC、マーケティング、テック、Web3カテゴリーを中心に、今週注目を浴びた国内外の最旬情報をお届けします。

カテゴリー:マーケティング、コスメ、Web3

 

「Ulta Beauty」公式サイト

 

 米国のコスメ業界では、近年リワードプログラムを活用し、限定クーポン券の発行といった会員特典でロイヤル顧客の育成や買い上げ率の増加に注力する企業が増えています。中でも、米国コスメ小売チェーン大手の「Ulta Beauty(アルタ・ビューティー)」がリワードプログラムの刷新を発表しました。

 これまでは「Ultamate Rewards(アルタメイト・リワード)」という名前で展開していましたが、現在は「Ulta Beauty Rewards(アルタ・ビューティー・リワード)」に名称をリニューアルし、会員特典の内容も合わせてアップデートしています。

 同リワードプログラムでは、顧客の年間購入金額に応じてランク分けされています。年間購入金額が1,200ドル以上で最上級の「DIAMOND(ダイアモンド)」、年間購入金額が500ドル以上で「PLATINUM(プラチナム)」のランクがそれぞれ付与されます。

 会員特典の内容としては、例えば、メンバーシップに加入している限りポイントは無期限で利用可能で、買い上げ金額に応じてより高い還元率でポイントが貯まるほか、誕生日限定クーポンや無料ギフトが貰えるといった特典が提供されています。

 

Ultamate Rewards」の会員特典の内訳公式サイトより)

 

 また最上級ランクの「DIAMOND」の限定特典としては、1ドルあたり1.5ポイントと最も高還元率でポイントが貯まるほか、25ドル(約3,500円)以上のオーダーには送料無料が適用、新商品への先行アクセス、無料サンプルが貰えるなどといった特典が用意されています。

 

新しい「Ulta Beauty Rewards」の特典の内訳(公式サイトより)

 

 また、新リワードプログラムでは、誕生日特典がアップデートされています。従来はブランド側が指定したギフトが送られてくるものでしたが、アップデート後はユーザーが好きな商品を選択してギフトとして貰うことができます。

 「Ulta Beauty」の最初のリワードプログラムは2014年にリリースされ、以来コスメ業界の模範モデルとして多くの会員を獲得してきました。現在同社は全世界で4,200万人以上の会員を抱えており、売上の半数以上がリワードプログラム会員による購入によって成り立っています。今後、さらなる業績の拡大に向けて、2024年には「Ulta Beauty Rewards」自体の認知度向上を狙った店舗での会員限定イベントなども開催していく予定だといいます。

 リワードプログラムを重要視しているのはコスメ業界だけではありません。

 決済大手の「Visa(ビザ)」は、2024年1月4日にSmartMedia Technologies(スマートメディア・テクノロジーズ)社と提携し、「Visa Card」を導入している企業向けにWeb3のロイヤリティプログラムを開始すると発表しました。これにより、「Visa」を導入している企業は、SmartMedia Technologies社が保有するブロックチェーン技術を活用して、自社のエンドユーザーに次世代のリワードプログラムを提供することが可能となりました。

 ブロックチェーンを活用することで実現しうる特典は、例えば、拡張現実(AR)での宝探し、ゲームによるポイントや景品の獲得など、新たな没入型の体験の提供が想定できます。これにより、新しいアプローチでユーザーとのエンゲージメントを図ることが期待できます。また、コンサートの電子チケットやデジタルアイテムなどの特典をトークン化(注)して保管できるデジタルウォレットもユーザーに提供する予定です。これらの特典が利用できる場は、メタバースなどのバーチャル空間だけではなく、リアルイベントや店舗も含まれます。決済サービスがWeb3技術と連携することで、より本格的なマスアダプションへと波及する重要な一歩になるといえるでしょう。

 B2B、B2Cの領域においても、ロイヤル顧客を獲得し続けることはビジネスの成長にとって欠かせません。今回紹介した事例のように、リワードプログラムは業界問わずロイヤル顧客とのタッチポイントとなる重要なサービスだといえます。もし自社でリワードプログラムを構築することが難しい場合、例えば、「Visa」の事例のように、サードパーティーのサービスを使って試行錯誤しながら知見を得ることで、最終的に自社独自のリワードプログラムの開発に活かしていくという方法も有効的だといえるでしょう。

 

注:トークン化とは、機密データ上のデータフォーマットを維持しながら、解読不能なランダムな数字又は文字列に置き換えることで情報を保護する仕組み

参照:
https://www.retaildive.com/news/ulta-beauty-expand-refresh-loyalty-program-rewards/703221/
https://investor.visa.com/news/news-details/2021/Visa-Introduces-Crypto-Advisory-Services-to-Help-Partners-Navigate-a-New-Era-of-Money-Movement/default.aspx