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LVMHグループが「フォートナイト」運営企業「Epic Games」と提携、次世代のブランド体験構築を目指す【編集部厳選:週間ホットトピック】

ケルビン・アウ
AILメディアパートナー
執筆者

小売、EC、マーケティング、テック、Web3カテゴリーを中心に、今週注目を浴びた国内外の最旬情報をお届け。

カテゴリー:小売、Web3、Z世代

 2023年6月14日、仏LVMHグループは、米ゲーム制作・ゲームエンジン開発企業EpicGames(エピックゲームズ)社と戦略的パートナーシップを締結したことを発表しました。EpicGames社の傘下には「Fortnite(フォートナイト)」という世界のアルファ(α)世代(※注)から絶大な人気を誇るオンライン対戦ゲームがあります。

 LVMH グループの公式リリースによると、今回の提携は、ゲーム文脈を生かした次世代のブランド体験構築ための戦略だといいます。今後の消費市場をけん引するZ世代とアルファ世代の新規顧客を獲得すべく、ゲームやメタバースなどを軸とした没入感の高いデジタルコンテンツを提供するためのインフレ整備の重要性が強調されています。

 

近年デジタルファッションやメタバースに積極的投資するLVMHグループ(公式プレスリリースより)

 

 同社は2017年から自社EC事業を展開しており、今回のEpic Games社との提携の背景には、EpicGames社が持つ3Dアニメーションの高い技術力を生かして、商品画像の3Dサンプル、バーチャルフィッティング、メタバース向けデジタルファッションアイテムの開発、バーチャルファッションショーの開催などといったデジタルコンテンツを拡充する狙いがあります。


(※注)「アルファ世代」とは2010年以降に生まれた12~13歳までの世代名称。

 

「Fortnite」 内で販売している「Balenciaga」のデジタルファッション(スキン)(公式プレスリリースより)

 

 「Fortnite」ゲーム内では、ゲームキャラクターに着せられる「スキン」と呼ばれるデジタルファッションアイテムの利用が可能で、これまで「NIKE(ナイキ)」や「Balenciaga(バレンシアガ)」が相次いでデジタルスキンを発売しています。このようなデジタルファッションの市場規模は14兆円に上るといわれています。

 また、Epic Games社は「Fortnite」の開発・運営を行うほか、最近では、ゲームや3Dアニメーションの開発エンジンの最高峰と称賛されている「Unreal Engine 5(アンリアル エンジン ファイブ)」の開発も行っています。すでに、一部のLVMHグループ傘下のブランドでは、「Unreal Engine 5」を先行活用し、デジタル体験の提供を開始しています。例えば、2022年6月には「BULGARI(ブルガリ)」が同サービスを活用し、英国のローマをテーマにしたメタバースをローンチしています。

 

「BULGARI」がリリースしたメタバース(「BULGARI」のYouTube公式チャンネルより)

 

 また、同じく昨年、「Unreal Engine 5」の技術を応用し、LVMHグループでは、初となるバーチャルヒューマンによる公式アンバサダー「Livi(リービィ)」を発表しました。Liviはブランドの発信だけではなく、環境保護などに関する教育知識も積極的に発信しています。LVMHグループでは今後、Liviを起点にゲームやメタバースに特化したインフルエンサーマーケティングの土台作りを強化しようとしています。

 

LVMH グループ初のバーチャルヒューマンアンバサダー「Livi」

 

 今回紹介したLVMHグループの事例のみならず、「Forever21(フォーエバートゥエンティーワン)」や「NIKE(ナイキ)」など、客層や価格帯の異なる他ブランドでもゲームやメタバースを軸としたマーケティング戦略に重きを置いています。今後のブランド戦略においては、単なるゲーム開発だけではなく、総合的なデジタル体験をシームレスに提供できるかどうかが各社の共通の課題となるでしょう。


参照:
https://www.lvmh.com/news-documents/news/lvmh-and-epic-games-announce-strategic-partnership-to-transform-maisons-creative-pipeline-and-customer-experiences/