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AILイノベーションノートVOL.5|シューケアを、スキンケアのように身近に。靴を永く愛用してもらうためリニューアル「SHOE CARE GOODS」

AIL編集部
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 会員企業様のイノベーティブな取り組みを紹介する「AILイノベーションノート」。取り組みから見えてくるヒントをAILコミュニティで共有し、会員の皆様と一緒に次のビジネスチャンスを探っていきます。

 第5回でご紹介するのは、創業70周年を迎えるオリジナル婦人靴・バッグを扱うダイアナ株式会社。同社は2023年6月に、従来のシューケア商品を一部リニューアルし「SHOE CARE GOODS(シュ―ケアグッズ)」として発表。これまでのケア用品のイメージを一新し、ピンクやゴールドの洗練された色調や、女性が手に取りやすいパッケージデザインが特徴です。 

 創業時より靴の修理やメンテナンスにも注力してきた同社の、シューケア用品のリニューアル経緯や、「SHOE CARE GOODS」を通じて実現したい展望について、プロモーション企画部部長の小茂田 啓介氏と、セールスプロモーション担当主任の西澤 夏美氏にお聞きしました。

 

\この方々に聞いた/

(写真左)小茂田 啓介氏

ダイアナ株式会社 プロモーション企画部 部長 


1997年入社。ルミネ・名古屋地区で4店舗の販売スタッフとして経験を積む。後、千葉ペリエ・静岡パルシェ店にて店長を務める。転勤し、名古屋ユニモール店の店長並びにゾーンマネージャーとして地区を統括。転勤後、池袋パルコ店店長並びに、ゾーンマネージャーを経て、本社に異動。商品部バイヤーを10年経験し、現部署プロモーション企画部部長に本年3月着任。

 

(写真右)西澤 夏美氏

ダイアナ株式会社 セールスプロモーション担当 主任 


東京造形大学でグラフィックデザインを学び、2015年入社。1年間販売スタッフを経験後、商品開発室に異動。5年間靴の商品開発を担当。2022年からプロモーション企画部にてプロモーションの企画・コンテンツ作成・デザイン業務を行う。シューケアグッズではパッケージデザイン・LP作成を担当。
 
「DIANA」公式サイト https://www.dianashoes.co.jp/ 
「SHOE CARE GOODS」公式ページ https://www.dianashoes.com/shop/cms/contents.aspx?contents=1063

 

「スキンケアのように日々手に取ることをイメージし、インテリアも溶け込むデザインにリニューアル」したシューケアアイテム。
全国のDIANA店舗、オンラインストアで取り扱い中

“お客様に選ばれる”ブランドであるために。会社全体で出した答えの一つがシューケア用品のリニューアル

―ダイアナのブランドコンセプトをお聞かせいただけますか?

小茂田氏:

 1940年に婦人靴の専門店として創業したダイアナは、1953年に株式会社となり、今年で70周年を迎えます。創業当時から、ヨーロッパの伝統にインスピレーションを受けた「エレガンス」をコンセプトとし、それを日本の職人の技術で進化させ、日本人に合う靴を創るという作り手の思いとともに成長してきました。

 ファッションが多様化する現代においても、「エレガンス」というコンセプトを変わらず持ち続けています。例えば、2019年にスタートしたスニーカーブランド「+diana(プラスダイアナ)」では、木型を一から作成。無駄を省いたダイアナらしい「エレガンス」を表現したブランド展開を行っております。DIANAブランドの商品は90%以上をメイドインジャパンにこだわり、高品質を維持しながら適量生産に努めています。

―今回、「SHOE CARE GOODS」のパッケージリニューアルは、どのような経緯で実現しましたか?社内での取り組み体制を含め、お聞かせください。

小茂田氏:

 私が管轄するプロモーション企画部は、店頭でのセールスプロモーション、SNSやデジタルに特化したWebプロモーション、メディア媒体に向けたプレスの3部門が一つになった部署です。今回のこのパッケージリニューアルに関しましては、会社全体の方針として声があがり、プロモーション企画部を中心にさまざまな部署を横断する形でスタートしました。

 これまでの大量消費・大量生産から循環型経済への時代の変化により、定着したライフスタイルをお持ちのお客様が増えてきていると感じる中で、“お客様に選ばれる”ブランドであるためにはどうしたらいいか、という課題感が取り組みの背景にありました。ダイアナの商品は、職人をはじめ多くの人々の手を経て作られており、お客様には永く大切に使用していただきたいという思いを常に持っております。そして、そのために私たちにはお手入れや修理といったアフターケアをしっかりとお客様にご案内する責任があると考えています。

 この二つの考えから、お客様に、よりケア用品を身近に感じていただけるようなパッケージリニューアルや訴求方法の検討が行われ、今回のリニューアルプロジェクトが発足しました。

 

「SHOE CARE GOODS」のリニューアル商品一覧。
上段の左から「防水スプレー、クリーム、携帯用クリーニングシート、サンダル用つま先プロテクター、ブラシ」、
下段の左から「けしごむ、ラバーけしごむ、クッションソール2種、ブーツキーパー」の10種

 

―今回のリニューアルコンセプトはどのようなものでしょうか?

西澤氏:

 最近のお客様のライフスタイルを考察すると、部屋は、仕事後に帰宅して寝るだけの場所ではなく、くつろげる空間としてきちんと整えている方が増えていると感じます。こだわりのある自宅空間に置いても違和感のない、インテリアに馴染むようなパッケージを目指すことを意識しました。

 

小茂田氏:

 今回一番時間をかけ、思い入れのあるものがブーツキーパーです。以前から取り扱っていたものが廃盤となっていた中、ここ数年下火だったロングブーツに再度ブームの兆しがあるということで、私と西澤とでメーカーと何度もやり取りを重ね、一からすべて企画して作りました。非常に大変でしたが、現在は店舗のロングブーツのディスプレイにも使用しており、デザイン含めて満足いく出来栄えとなっています。

 また、他のケア用品については、パッケージだけでなく、裏面の注意書きや説明書きの内容についても、お客様相談室に寄せられた声や弊社にこれまで蓄積されてきたお客様のご意見をもとに表現をアップデートしています。

 さらに細かいところで言えば、店舗スタッフからの意見も取り入れています。例えば、サンダルのつま先汚れを防ぐシートに付随する両面テープの剝がしにくさも、以前から店舗スタッフより声があり、メーカーと一から改良しています。実は、今回の「SHOE CARE GOODS」はニーズの高い代表的なケア用品から先行してリニューアルしているのですが、今後は靴の材料メーカーとも情報交換し、ラインアップの拡充をしていきたいと考えています。

 

今回一番リニューアルにこだわったという「SHOE CARE GOODS」の「ブーツキーパー」

 

 

左:リニューアルした「ブーツキーパー」のパッケージ、右:従来パッケージ

 

「防水スプレー」の表裏の新旧パッケージ比較画像。いずれも左がリニューアル商品、右が従来商品。
インテリアに馴染むシンプルなデザインに一新されている。

専用スペースを全店舗に設置。オプションではなく、靴と一緒に選んでもらえる「商品」として訴求

-コスト面でも手に取りやすい価格設定だと思いますが、お客様への訴求方法においては、どのような工夫やプロモーションを行っていますか?

小茂田氏:

 今回のパッケージリニューアルに関しては、お客様に「靴のケアや修理を習慣化し永く愛用してほしい」という想いから、売上は優先していません。信頼関係の深い取引先が積極的に協力してくれたこともあり、ほとんどのケア用品で価格は据え置きでリニューアルを実現しています。また、ケア用品の一部には、ビニールのパッケージを紙に変更したものや、外箱をなくしたものなど、より環境にも配慮しています。

 お客様への店頭での訴求方法も一新しています。従来のケア用品はというと、レジ横に置いてあり、お客様が商品をお買い上げいただいたタイミングでご案内していました。しかし、リニューアル後は、「SHOE CARE GOODS」専用の什器とスペースを全店舗に用意して展開し、お客様にケア用品自体にも自発的に興味を持っていただけるよう、ディスプレイにも工夫を凝らしています。

 さらに今後は、SNSなどを通じて実際のお手入れ方法やハウツー動画を配信していきたいと考えています。リニューアル商品はスタッフや関係者からも好評で、今後は販売スタッフ全員がリニューアル背景もしっかり理解して接客することで、一人ひとりのお客様にダイアナの想いをお伝えしていきたいと思っています。

 

専用の什器にディスプレイされている「SHOE CARE GOODS」(DIANA原宿店にて編集部撮影)

お客様と永く付き合っていくための新しい接点としての「SHOE CARE GOODS」

-ダイアナでは店頭でもともと修理サービスを行っていると伺いました。年間で、どのような修理対応を行っているのでしょうか?

小茂田氏:

 ダイアナの直営店に靴をお持ち込みいただくと、パットやストレッチャーを使用した靴の微調節(無料)や修理(有料)をご提供しています。2011年からは「DIAMO(ディアモ)」という会員サービスを開始し、リサイクル品をお持ち込みいただいた会員様には、一部の店舗限定で使用できる1,000円分のクーポン還元キャンペーンなども行っています。年間の修理依頼は5万件弱ほどあり、2004年には修理専門のR・F・アルマーク株式会社を設立しました。

 ダイアナの靴は職人の手で非常に緻密な設計で作られております。その美しさと品質・安全性を保つ為に、消耗部位の修理については、純正部品を使用することを推奨しております。お客様にご着用いただく中で起こるさまざまな靴の変化に自社でしっかりと対応し、細やかなサービス提供を心掛けることで、ダイアナを永くご愛用いただきたいと考えています。

―最後に、お客様へ対するサービスや今後の「SHOE CARE GOODS」の展望についてお聞かせください。

小茂田氏:

 これからはより一層お客様一人ひとりに寄り添うようなサービス提供に注力していきたいと考えています。現在は、データ化されている顧客情報を店舗間でも共有し、どの店舗でも同じサービスを受けられるシステム作りに取り組んでいます。また、将来的にはダイアナの既存店舗の近くにメンテナンスや修理ができる専用スペースを設け、「SHOE CARE GOODS」をはじめ、ケアや修理の方法をお客様にお伝えする場として、展開していきたいですね。

 

西澤氏:

 多くの方がダイアナといえば「パンプス」というイメージで来店されますが、シューケアや無料のサイズ調節サービス、靴の修理などは、まだまだ知らない方も多いと思います。今後はこの「SHOE CARE GOODS」を通じてアフターケアも充実しているブランドという認知を広げていきたいと思います。

【編集後記】おわりに

 今回は「ダイアナ原宿店」に併設されている撮影スタジオで取材させていただきました。スタジオに並んだ、ピンクにあしらわれたパッケージの「SHOE CARE GOODS」を一目見て、”えーカワイイ!”と編集部一同が声を揃えるほど。確かに、これまでの靴のケア用品のイメージというと、(主に男性用の)革靴をケアするシーンや、靴箱の目のつかない隅にしまっておくような”備品”と考える方が殆どではないでしょうか。

 そんな”オプション”アイテム止まりだったケア用品に焦点を当て、なおかつ、まるでスキンケア用品と見間違えてしまいそうなほど洗練されたパッケージデザインへ昇華させた今回のリブランディング。「DIANA」を永く愛用しているファンに喜ばれるのは勿論のこと、”靴をお手入れしながら大切に永く履いてほしい”という、靴との付き合い方を啓もうしていける可能性のあるアイテムだと感じました。このパッケージのケア用品ならぜひ使いたい! 靴箱のインテリアとして飾りたい! と思いませんか?

 取材の最後に小茂田さんがお話してくださった今後の展望である「シュ―ケア専用スペース」の実現。これは今後のロイヤル顧客に対するサービスとしてはもちろん、お気に入りの靴に対してプロのケアを希望するすべての方に向け、手軽に利用できる体験型店舗として非常に有効だと感じます。ブランディングの背景やケアアイテムに込められたパーパスは、まるで海外の新鋭D2Cブランドの仕掛けのよう。「SHOE CARE GOODS」が今後どのように”バズ”り化けていくのか、引き続き注目していきたいと思います。(AIL編集部 小川)


取材協力

ダイアナ株式会社 
プロモーション企画部 部長 小茂田 啓介氏
プロモーション企画部 セールスプロモーション担当 主任 西澤 夏美氏
https://www.dianashoes.co.jp/

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