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回転寿司チェーンの中国戦略から見る次世代都市、中国・成都の魅力【中国リアルトレンドレポート】

駱 嘉寅(ロ カイン) 
中国在住AILメディアパートナー
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 日本の回転寿司チェーン「くら寿司」を展開するくら寿司株式会社は、2023 年6月15日に上海市内で中国初となる店舗を出店しました。中国における外食需要は回復に向かっていることから、中国市場開拓を進めたようです。上海市の周辺エリアを中心に、2023年内に2店舗の出店を計画しています。

 一方で、「くら寿司」初出店の3日後の6月18日、「くら寿司」のライバル寿司チェーンといえる「スシロー」を展開する株式会社あきんどスシローが重慶市に初の店舖をオープン。同社は成都市にすでに4店舗を出店しており、四川エリア(四川省と重慶市)は広東エリアに次いで、「スシロー」の中国における第二拠点といえるまでになりました。

 つまり、「くら寿司」と異なり、「スシロー」は上海や江蘇等の沿海地域を避けて内陸の成都に積極的に進出しているのです。その理由は何でしょうか? 今回、成都の特徴を踏まえ、日本企業が進出する理由と、中国の次世代都市として注目が集まる成都の魅力に迫っていきます。

 

「スシロー」中国・成都万象城店のようす(筆者撮影)

成都市とは? ここ数年で大きな経済的発展を遂げている注目都市

 成都は中国四川省の省都(省政府が設けられている都市)で、過去二千年の歴史の中で唯一、場所も名前も変わらずに残った歴史的都市です。面積は1.43万平方メートルで、人口は2,127万人(2022年時点)です(参考:上海の2022年の人口は2,476万人)。パンダの故郷や四川料理の発祥の地として有名な都市で、温暖な気候と農産品に恵まれ、歴史的にみると自然災害も少ないため、住みやすい地域です。そのことから、「天府の国」「レジャーの都」と呼ばれています。

 しかし改革開放後の20年間、「天府の国」であった成都市をはじめとする内陸部は、経済発展を遂げた東部沿海部と比べて大きく立ち遅れ、格差が拡大しました。そこで中国政府は2000年から西部大開発政策を打ち出しました。西部地域へ大型プロジェクト資金を投入するとともに、外資系企業の投資を奨励するため各種優待政策を実施しました。

 中国政府の政策によりこの数年で大きな経済発展を遂げた成都は、生活環境の最適化に全面的に力を入れ、都市のソフトパワーを向上させます。世界に向けて積極的に文化や旅行の有名都市としてアピールし、国際的なグルメの都、音楽の都、コンベンションの都として高水準なコンテンツを創出しています。2023年7月28日~8月8日には、学生のオリンピックといわれる「ユニバーシアード」が成都で開催されています。

 
成都のイメージ。(左)「天府熊猫塔(通称:四川省テレビタワー、パンダタワー等)」、(右上)パンダ(右下)「安順廊橋」の夜景

上海・北京に次いで第3位! 成都への新規出店状況

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執筆者

  • 駱 嘉寅|ロ カイン

    中国在住AILメディアパートナー

    早稲田大学大学院卒。日系証券会社のアナリストとして中国現地(上海)における金融政策、株式市場、産業のリサーチを手掛け、2018年より個人投資家として活動。幅広い業界に注目してます。