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世界の食市場の流れを掴め! B2B専門・高級食品見本市「Summer Fancy Food Show 2023」【Coffee Talk from NYC Vol.8】

RINA Yoshikoshi
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
執筆者

Category: Exhibition, Food

 ニューヨーク現地より、小売×テック関連の旬なトピック・体験レポートをお届け。アメリカのコーヒーブレイク中に行われるカジュアルミーティング、”Coffee Talk”にちなんで、気軽にインプットいただけるレポートを定期配信していく。

 Vol.8では、アメリカ東海岸最大級のB2B専門の高級食品見本市「Summer Fancy Food Show(サマーファンシーフードショー)」の視察レポートをお届け。今年で67回を迎えるこの見本市は、販路開拓を目指す世界各国のブランドが出展し、食のトレンドやパッケージデザインなど市場調査の場として多くのことが学べるイベントのひとつだ。

 

「Summer Fancy Food Show」のリボンカットのようす(筆者撮影)

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックからすっかり息を吹き返しているアメリカで開催されるカンファレンスや見本市。今年もJacob Javits Center(ジェイコブ・ジャビッツセンター)で開催された「Summer Fancy Food Show」では、2,200を超える出展枠が埋まり、そのうち250を超える企業が初出展、550を超える出展者が新商品を発表したという。迷子になってしまいそうな巨大な会場には、40以上のカテゴリーで18万を超える商品が並んだ。

どのようなバイヤーが訪れているのか?

 毎年、夏季と冬季に2度開催される「Fancy Food Show」。次回は来年1月にラスベガスで開催され、今回の夏の見本市のようすを盛り込んだ予告動画が早くも公開されている。映像には、本稿でも後ほど紹介する日本からの出展企業、杉本商店や共栄製茶のブースも登場。

 この見本市を主催するSPECIALTY FOOD ASSOCIATION(スペシャリティ・フード・アソシエーション、以下SFA)によれば、来展者は高品質な商品や食材やアーティザンな(職人による)商品を発掘するべく、ナショナルグローサリーチェーンや大手リテーラー、食品サービス業、自営業のグローサリー、スペシャリティーストア、ホスピタリティー、ラグジュアリーデパート、ナチュラルストアなど多くのカテゴリー業態に関わる従事者、バイヤー、ディストリビューターなどが訪れるという。

 

主催のSPECIALTY FOOD ASSOCIATIONのYouTube公式チャンネルより

日本からも参加! 注目のジャパンパビリオン

JETROがサポートする日本企業出展エリアのようす(筆者撮影)

 

 今年の「Summer Fancy Food Show」のインターナショナルパビリオンでは、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカなど31の国や地域が参加。日本もその一つとして出展している。

 日本からの出展は毎年JETROによる参加支援プログラムが用意され、出展対象のカテゴリーは食品、飲料、スナック、スイーツ、肉類、チーズ、特産物品だ。

 今回は、北海道、宮城、鹿児島、新潟、茨城、静岡、大阪など日本各所から参加。抹茶・緑茶などのお茶類、めかぶ等の海藻類、讃岐うどんや素麺などの乾麺、日本産の栄養価の高い椎茸、豆腐を使ったプラントベースフード、菓子類など、35社がアメリカ市場への進出や市場拡大に挑んだ。各社工夫を凝らし試食や試飲を準備。英語で接客できる現地在住のセールススタッフを配置しているブースもあり、あらゆる形で日本食のエクスペリエンスを届けていた。

アメリカD2Cブランドに負けないストーリーを持つ日本ブランド

 30社を超える日本ブランドの中でも特に来場者とのエンゲージに長けていたと筆者が感じたのは、宮崎県高千穂地方から参加していた干し椎茸を販売する株式会社杉本商店だ。杉本商店の商品は高品質であることはもちろん、「サステナアワード2020 伝えたい日本の“サステナブル”」の「つくる・はこぶ・うる」部門で、農林水産技術会議事務局長賞の大賞を獲得し高い評価を受けている。

 昨今は“サステナブル“を謳いつつも、言葉だけのグリーンウォッシング(注1)を行う企業も存在する中で、杉本商店のストーリーはアメリカのスタートアップを想起させるミッションとパーパスを掲げている。またサプライチェーンの透明性に関する外国人への説明も分かりやすく、共感を集めており非常に印象的だった。

 杉本商店で扱う椎茸は、地元の多くの生産者から現金で直接仕入れを行なっているそうだ。しかし、昨今の市場の冷え込みは国内の食品業界でも多分に漏れず起こっている。同社では、付き合いのある生産者からの仕入れを縮小しないために、国内にとどまらず世界へと販路を拡大しているのだ。杉本商店は決して、国内市場の冷え込みを感じるからと言って立ち止まることをせず、新たな挑戦へと踏み出している。


(注1)グリーンウォッシング…「グリーン(環境)」と上辺や見せかけを意味する「ホワイトウォッシュ」を掛け合わせたことば。実際は環境に配慮していないにも関わらず、配慮しているように見せかけて商品やサービスを訴求すること。

 

杉本商店の杉本代表が自ら椎茸の形をしたハットを被りブースに立っていた。エンタメ性に強く引き付けられる外国人が足を止めないわけがない(筆者撮影)

「Whole Foods Market」に並ぶ日もそう遠くないと感じるお茶ブランド「morihan」

 今回大阪から出展していた共栄製茶株式会社は、伝統を守りながらも進化し続ける企業で、自社のお茶ブランド「morihan(森半)」の商品で展示会に挑んでいた。ブースでは、アメリカでも人気の抹茶を缶とパウチの2パターンで用意。美しくデザインされた5種類のお茶のパッケージをメインに並べ、その前方にはそれぞれの茶葉を木箱に入れてディスプレイ。茶葉の種類が見分けられるだけでなく、茶葉の香りや美しさを直接感じ取ってもらえるよう工夫を凝らしていた。

 

共栄製茶の展示ブース(筆者撮影)

 

 同社のブースに訪れた来展者には、清々しさを感じられる冷たいお茶が振舞われた。繊細で柔らかな風味は、広大な展示場で沢山の商品を見て興奮するバイヤーたちのマインドをリラックスさせただろう。さらに同社は、ブースに立ち寄った来展者に対し、パッケージデザインの印象や改善点のヒアリングも積極的に行っていた。世界中から集まるバイヤーや同じ業態に属する仲間からの意見。企業にとって貴重なリソースとなるだけでなく、他ブランドとの横の繋がりを生むきっかけになったことは間違いないだろう。

 日本の商品というと、どうしても身近なアジア系の店舗から販路開拓と考えてしまいがちだが、共栄製茶では、米国市場に向け「USDA Organic」の認証も獲得し、パッケージを含めて「morihan」のブランディングに取り組んでいる。この企業姿勢からも、同社の商品が米国のオーガニックスーパー「Whole Foods Market(ホールフーズマーケット)」や、新ブランドの取り扱いに積極性を見せる「Fairway(フェアウェイ)」といった名だたる売り場に並んでも存在を確立できると感じた。

 ジャパンパビリオン以外では、既に米国市場でビジネスを拡大する伊藤園、明星、久世福商店などの出展も確認できた。

 

「Summer Fancy Food Show 2023」の会場のようす(筆者撮影)

 

2020年から2022年にかけて急速に成長するカテゴリー5選(参照:SPINS/SFA)

  1.エナジー・スポーツ系飲料水

  2.紅茶・コーヒー(冷蔵・RTD)

  3.食事系の食品(冷蔵)

  4.朝食系の食品(冷凍)

  5.クリーム・クリーマー(冷蔵、常温) 

 

 飲料水で言えば、この数年で実に多くのD2Cブランドが誕生し、その多くがロイヤル顧客を獲得している。ニューヨークのスーパーマーケットで飲料類の売り場に行くと、当然ながら大手企業が展開するブランド商品が肩を並べているが、かなりの種類の新規ブランドも日々参入しており、既存商品に負けない存在感を放っている。このようすは日本とアメリカにおける大きな違いだと日頃感じている。

おわりに

 「Fancy Food Show」も、以前に記事で紹介した「SHOPPE OBJECT(ショップオブジェクト)」も、JETROの支援を活用し出展することが可能だ。もしこういった展示会や見本市への出展を検討し始めているのであれば、まずは視察に訪れることを強く勧めたい。やはり一度視察する側に立つことで、ブースの見せ方、試食・試飲の提供方法、カタログやDMなどひとつとっても、より効果的な準備ができるだろう。

 今回紹介した「Summer Fancy Food Show」は、午前10時から午後4時までの3日間に渡り開催されたが、まだまだじっくり見て、もっと体験して、もっと話を聞きたい! そんな後ろ髪を引かれる思いで会期の幕を閉じた。


Winter Fancy Food Show / ウィンター・ファンシーフードショー

開催日:2024年1月21日から1月23日(3日間)

開催場所:Las Vegas Convention Center West Hall (ネバダ州・ラスベガス)

https://www.specialtyfood.com/specialty-food-association/about-us/

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執筆者

  • RINA Yoshikoshi

    NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント

    NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
    関心: #テクノロジー #NFT #WEB3  #ウェルネス #未来の街作り