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カテゴリー:小売、経営
2024年2月27日、米国大手百貨店チェーンの「Macy’s(メイシーズ)」が現地の小売業界全体に衝撃を与える重大発表をしました。それは2027年までに、例えキャッシュフローが健全な状態であっても、採算が取れない150の直営店舗・大型旗艦店を全て閉鎖するというもの。同社は現在全米で560店舗を展開しており、今回の発表で閉鎖対象となる150店舗はなんと店舗数全体の約3割に相当します。
現地小売業界から大胆な経営改革として注目を集める今回の発表について、その背景を見ていきたいと思います。
「Macy’s」の公式ECサイト
今回の経営改革は「Macy’s」のここ数年の業績低迷が起因しています。同社は、2023年12月末に、当時の「Macy’s」の主要機関投資家や投資ファンドから、特にZ世代を中心とした若年層の新規獲得の成果が乏しいこと、年末商戦の業績不振などといった指摘を受けています。さらなる業績悪化を懸念する声も上がり、投資家は当時の経営陣に対し、上場廃止、経営陣の変更、さらに約50.8億ドル(約8,700億円)での買収提案まで持ち掛けました。
低迷している「Macy‘s」の株価(参照:Yahoo!Finance)
しかし、当時の「Macy’s」経営陣は提示された買収価格が同社の価値を過小評価していると判断し、買収提案を見送りました。その後、いくつかの協議を経て、同社は経営陣の刷新に踏み切っています。
そして2024年2月に、抜本的な経営改革というミッションを背負う形で、 Tony Spring(トニー・スプリング)氏が「Macy’s」のCEOに就任。Tony氏は、「Macy’s」のグループ会社である高級百貨店業態「Bloomingdale’s(ブルーミングデールズ)」の敏腕幹部メンバーで、1987年に「Bloomingdale’s」の幹部候補生として入社して以来キャリアを築き上げ、2014年には取締役に就任しています。
Tony氏が「Macy’s」の新CEOに抜擢されてからは早々にコストカットに着手。部門再編や人員配置の最適化に注力し、2,300人ほどのレイオフに踏み切りました。さらに、店舗戦略の改革として、売上規模を問わず150の不採算店舗を今後3年間で閉鎖していくことを発表。2024年内には50店舗を閉鎖する予定だといいます。
敏腕新CEOが掲げる3つの成長戦略
ここでのポイントは、「Bloomingdale’s」が高級百貨店業態であるのに対し、運営元の「Macy’s」は大衆向けというポジションの差異にあります。パンデミックにより米国ではインフレーションが急激に進み、消費行動が変化。当時、本来であれば「Macy’s」の低価格業態は価格に敏感な消費者マインドと合致しているはずでした。