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顧客調査で“インサイトを掴む” 新生「REGAL(リーガル)」の再生と挑戦【AILイノベーションノートVOL.14】

会員企業様のイノベーティブな取り組みを紹介する「AILイノベーションノート」。取り組みから見えてくるヒントをAILコミュニティで共有し、会員の皆様とともに次のビジネスチャンスを探っていきます。第14回でご紹介するのは、「REGAL(リーガル)」や「REGAL Shoe & Co.(リーガル シューアンドカンパニー)」など、上質な靴ブランドを展開するSPA企業、リーガルコーポレーション。
1902年に日本製靴株式会社として設立し、軍靴の生産を経て、1961年には「REGAL」ブランドの技術提携・生産販売を開始。1990年には「REGAL」の商標権を取得しました。100年以上にわたり「働く人の誇りとともに」と足元を支え続けてきた同社は、コロナ禍を契機にリブランディングを決断。
3年の歳月をかけて刷新された新生「REGAL」は、新たな時代に何を提供するのでしょうか。リブランディングの経緯や新たなリセール&アップサイクルの取り組みついて、執行役員 商品企画部 部長の勝川 邦彦氏、事業開発部 新規事業課 課長の邉見 剛氏にお聞きしました。
勝川 邦彦氏(画像右)
株式会社リーガルコーポレーション 執行役員 商品企画部 部長
かちかわくにひこ●1968年、愛知県出身。愛知学院大学法学部卒。商品の企画・開発をはじめ、さまざまな部門で幅広い事業に携わってきた。2021年より現部門。現在は、商品企画部・事業開発部を管轄する執行役員として、コロナ禍を経た事業の立て直しの指揮を執るとともに、さまざまな取り組み先との協業を通じて企業・ブランドの価値向上や事業の変革・創出に取り組んでいる。
邉見 剛氏(画像左)
株式会社リーガルコーポレーション 事業開発部 新規事業課 課長
へんみたけし●1971年、東京都出身。明治学院大学国際学部卒。リーガルコーポレーション新卒入社後、主に「REGAL」ブランドの商品企画と小売店舗に向けた商品戦略に従事。現在は、事業開発部新規事業課の責任者として、シューズ領域以外の新規事業開拓に向けた異業種との協業を推進。企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定や本社・新潟工場での年2回開催のファンミーティング活動にも携わる。
リーガルコーポレーションプレスリリース「2月26日、REGALブランドが新しく生まれ変わります」 https://www.regal.co.jp/information/detail/306
「REGAL」公式オンラインサイト https://www.regal.co.jp/brand/regal
「REGAL Shoe & Co.」公式オンラインサイト https://www.regal.co.jp/brand/regal_shoe_and_co
アップサイクル&リセールプログラム「REGAL Shoe & Co. REBUILT」
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2025年春夏のキールック(公式プレスリリースより)
3万人への顧客調査から見えた新しい「顧客インサイト」とは
今回、「REGAL」ブランドでは約20年ぶりとなるリブランディングを決断されたとのこと。そのきっかけや背景にはどのような課題や経緯がありましたか?
勝川氏:
2002年に続き、二度目のリブランディングを決断した最大のきっかけは、コロナ禍を経て進んだ、世の中の働き方やマインド、働く人の服装における大きな変化です。弊社もコロナ禍で組織や拠点を見直すなど、経営判断を迫られるような大打撃を受けました。今後の事業再生を模索する中で、「私たち自身も変わらなくてはいけない」と感じ、リブランディングに着手することになりました。まずは、変化した社会や顧客意識に対する解像度を高めるため、3万人規模の顧客定量調査を実施。さらに、革靴の購買意向に基づいて1,500名に絞り、その中から12名にデプス調査を行い、顧客インサイトを可視化しました。
かなり大規模な顧客調査ですが、そこからどのような「顧客インサイト」が可視化されたのでしょうか。
勝川氏:
顧客調査で明らかになったのは、コロナ禍以前と大きく異なり、「本質を大切にしたい」という思いを持つ方が非常に増えたという意識面の変化です。他人からどう見られたいかという他者評価の視点から、「自分目線で内面と向き合うマインド」にシフトしていることが分かりました。デプス調査では、対象者のシューズクローゼットや商品購入に至った理由を含め、ライフスタイル全般を細かくヒアリング。共通点として、生活の質に対する意識が高く、自分自身のQOL(注)を非常に大切にしている傾向が得られました。そこから、従来は男性用のビジネスシューズというイメージが強かった「REGAL」ですが、ジェンダー問わず「丁寧に毎日を過ごしたい」という嗜好を新たなコンセプトとして落とし込み、顧客像を再設定していきました。
(注)Quality of Life(クオリティオブライフ、生活の質)の略。世界保健機関(WHO)が定義した、身体的・精神的・社会的活動を含む総括的な生活の満足度を示す概念。
リーガルコーポレーション本社の特別なアーカイブス。
「REGAL」のヒストリーが詰まった貴重な革靴製品や限定ノベルティなどがずらりと並ぶ(編集部撮影)
顧客調査を経て、どのように社内体制を整え、リブランディング計画を推進してきたのでしょうか。新生「REGAL」のコンセプトについてもお聞かせください。
勝川氏:
顧客意識の大きな変化を受け止め、今回のリブランディングは中期経営戦略の中核に据えている「顧客戦略」と「ブランド戦略」の両方に深く関わる事業であり、同時に、10年後の会社の在り方を担う中長期的な事業戦略としても位置付けました。そのため、プロジェクト立ち上げ時には、部署横断的に基幹メンバーを約20名選出。50代のマネージャー層は意図的に外し、3年をかけてリブランディングを推進しました。当時はコロナ禍の影響で社内研修などを行う余裕がなかったため、会社の未来を担う「次世代リーダーの人材育成」を実践的に進めるというミッションのもと、30代の若手メンバーの経験値向上を目指すプロジェクト体制を組みました。
2025年春夏シーズンからローンチする新生「REGAL」では、従来の赤をキーカラーとしたブランドロゴを刷新し、新たなタグライン「Always feel good(ずっと心地いい)」を設定。このタグラインは、機能的な履きやすさだけでなく、情緒的な「心地よさ」も意味しています。例えば、お気に入りの靴を履いて出かける際の晴れやかな気持ちや、“天気が良いからもう一駅歩こう”といった「気持ちが上がる瞬間」を大切にしたいという想いを込めています。商品に限らず、お客様のライフスタイルや価値観に常に寄り添い、新たな顧客体験や価値を提供していきたいと考えています。
「REGAL」の新たなロゴとタグライン。
海外でも通じる英語表現など、プロジェクトメンバーで細かく意見を出し合い設定した
事業全体を“整える”リブランディングを目指す「ブランドチューニング」
「REGAL」でこれまで2度のリブランディングを経験した勝川さん。約20年のブランド変遷を振り返ってのご感想はいかがでしょうか?
勝川氏:
コロナ禍以前は、事業課題解決に注力するあまりお客様の声に十分耳を傾けることができていない時期もありました。皮肉にも、コロナ禍という逆境があったからこそ、顧客経験価値の重要性を再認識することができたのです。これは弊社代表取締役の青野が生み出した言葉ですが、今回のリブランディングを「ブランドチューニング」という新しい言葉で表現しています。ブランドの独自性を高めるブランディングや「部門最適」ではなく、基幹ブランド「REGAL」の刷新を起点に事業全体を「整えていく」ことで「全体最適」を目指すという指針です。代表が主導した一度目のリブランディングに携わったからこそ、その経験を活かして今回はインナーブランディングにも注力し、お客様の期待に応え、さらに成長していこうという強い思いで挑みました。
また、個人的な思いですが、コロナ禍で身を引かれた先輩方の想いを継ぎ、今頑張っている後輩たちに未来のバトンを渡していかねばならないという強い責任感を感じています。リブランディングは「ここからが本番」だと思っています。全社員が3年後、5年後のありたい姿を求めて、お客様のために今できることを自立的に実行しなくてはならない。なぜなら、お客様は常に変化し、社員一人ひとりがその変化に対応し続ける必要があるからです。
技術があるからこその「二次流通」「アップサイクル」 お客様の声から生まれたプロダクト
お客様のお声から生まれた「REGAL」の「ルームシューズ」(リーガルコーポレーション提供)
一方、同時期に新たなアップサイクル&リセールの取り組みを始動されています。「REGAL Shoe & Co. REBUILT(リーガル シューアンドカンパニー・リビルト)」と「CYQUEL(サイクウェル)」について、それぞれの取り組み状況をお聞かせください。
勝川氏:
2010年に始めたブランド「REGAL Shoe & Co.」はファッション性を重視しており、古着やビンテージに親しみのある若年層にも支持されています。他ブランドとの協業も行っており、今年度の購買層の約25%は海外のお客様という新たな顧客層の獲得も進んでいます。同ブランドはリセールバリューが比較的高い傾向に着目し、2022年に「REGAL Shoe & Co. REBUILT」という古靴の回収・販売を試験的にスタートしました。「REBUILT」の取り組みでは、回収した製品を単に再販するのではなく、ソールや革のカスタマイズを施し、新たな魅力を持つ製品として再生しています。設立当初から長年培ってきた独自の仕立て(靴の製法)や修理技術を最大限に活かし、唯一無二のプロダクトを生み出しています。そうした一期一会の出会いを楽しみ、愛着を持ってロングユースいただくことで、お客様のロイヤリティを高め、ブランドに共感していただくことを目指しています。
邉見氏:
天然資源である“革”を取り扱う企業として責任あるモノづくりを行ってきましたが、製造過程で発生する「残革の廃棄」は、長年の大きな課題でした。そこで立ち上げたのが、廃棄となる残革や規格外品を新たに革小物として生まれ変わらせる「CYQUEL」というレザーグッズブランドです。主にB2B事業として、残革を活用したノベルティや祝い品などを共同企画しています。また、革を使ったB2C向けのヒット商品が「ルームシューズ」です。当初はフィッティングルームで使用する店舗備品として生産したのですが、実際に利用したお客様から好評をいただき、多くの購入希望が寄せられたことから商品化に至りました。新築祝いなどのギフト用途としても大変好評です。
残革で作られた「CYQUEL(サイクウェル)」の革小物(リーガルコーポレーション提供)
タイムレスでボーダレスな時代こそ、お客様のライフスタイルに響く商品を
リブランディング、リセール&アップサイクルの取り組みを通じて、次世代へ続くモノづくりやブランドの在り方をどのように見据えていますか。展望をお聞かせください。
勝川氏:
今後は、基幹ブランド「REGAL」だけでなく、コンセプトブランドにおいても、ジェンダーや国内外問わず新たなポテンシャルを獲得することに努めていきたいと考えています。昨今はSNSの効果もあり、時代はタイムレスでボーダレス。共感いただけているかどうかの反応も可視化されるのが速くなりました。国内外のセレクトショップや他ブランドとの協業を検討する中では、損得ベースではなく、お互いのシナジーを最大限に引き出し、お客様の想像をはるかに超える価値を生み出していきたいと思っています。
邉見氏:
弊社ではサステナブル経営を掲げ、先述したさまざまな取り組みを展開していますが、事業課題を優先するのではなく、お客様に喜んでいただくことが根底にないと意味がないと考えています。今後に向け、サステナブル経営を具現化するブランドとして、靴から雑貨までライフスタイル全般を取り扱う新ブランドのローンチを進めています。業界をリードする企業として、天然皮革のサステナブル活用を啓もうするという使命感を果たしていきたいと思います。
【編集後記】おわりに
リーガルコーポレーション本社のアーカイブス(編集部撮影)
本社にうかがい、取材前に「REGAL」のこれまでの歩みが詰まったアーカイブスを案内していただきました。一般公開していないこの一室は、入った瞬間に革の香りに包まれ、部屋いっぱいに貴重な革靴製品や一点物が展示されている、リーガルコーポレーションの宝庫ともいえるような空間。ビンテージのリーガルシューズのほか、軍靴や革用ミシン、「REGAL」のオリジナルウェアを着た歴代の限定テディベアのノベルティ(本体もテディベア作家によるオリジナル!)など、ブランドヒストリーの詰まったアイテムが所狭しに展示されています。他では見られない“特別なコレクション”を優雅な気分で楽しませていただきました。
123年という社歴を刻む中で、社会情勢や消費需要の変化に対応しながら「足元を支え続けてきた」リーガルコーポレーション。そして、生活消費、働き方、人との関わり方すらをも一変させた前代未聞のパンデミック。今回取材させていただいた主幹ブランド「REGAL」のリブランディングの決断の裏側には、そうした変化を遂げた社会において、ブランドの生き残りをかけて革靴文化や企業のアップデートを図る並々ならぬ想いと挑戦が詰まっていることが、勝川氏、邉見氏のひとつ一つの言葉からひしひしと伝わりました。2度のリブランディングを経て、力強く、かつ落ち着いたトーンで今後の「REGAL」が目指すべき姿を語るお二人が印象的でした。
取材で「これからが本番」と語った勝川氏。新生「REGAL」が“足元”から仕掛けるライフスタイル・カルチャーのアップデートや新たな取り組みに、引き続き注目していきたいと思います。《AIL編集部 小川》
取材協力
株式会社リーガルコーポレーション
コーポレートサイト https://www.regal.co.jp/corporate
「REGAL」公式オンラインサイト https://www.regal.co.jp/brand/regal
「REGAL Shoe & Co.」公式オンラインサイト https://www.regal.co.jp/brand/regal_shoe_and_co
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APPARELWEB INNOVATION LAB.|アパレルウェブ・イノベーション・ラボ
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小川 祐佳|Yuka Ogawa
APPARELWEB INNOVATION LAB. コンテンツディレクター
おがわゆか●1990年、北海道出身。横浜市立大学国際総合科学部卒。繊維専門商社、PR・広告企業での法人営業職を経て2020年アパレルウェブ入社。現在は、企業経営層に向けビジネスヒントを発信する法人会員制サービス「アパレルウェブ・イノベーション・ラボ(AIL)」にて、セミナー・イベント企画、オウンドメディア編集、企業取材などのコンテンツ運営業務全般を担う。趣味は旅行・辛いもの。