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AILイノベーションノートVOL.6|“ブランド”とは、顧客を飽きさせない”驚き”だ 商品を追求し続けて25周年の「pas de calais(パドカレ)」が目指すリブランディングの完成形

AIL編集部
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 会員企業様のイノベーティブな取り組みを紹介する「AILイノベーションノート」。取り組みから見えてくるヒントをAILコミュニティで共有し、会員の皆様と一緒に次のビジネスチャンスを探っていきたいと考えています。

 第6回でご紹介するのは、今年25周年を迎えた、世界中に根強いファンをもつレディースブランド「pas de calais(パドカレ)」とメンズブランドの「SAGE DE DRET(サージュデクレ)」を展開するアパレルメーカーのギャラリー・ド・ポップ。天然素材や伝統的な染法と最先端のテクノロジーを掛け合わせた、自然とモードが調和するオリジナルの世界観が人気です。

 激動の経済・社会情勢の中を生き抜いてきた25年間を振り返って、ターニングポイントやブランド戦略、そして25周年イベントと今後の展望について、代表取締役 小林 司氏とPR担当 鬼熊 みどり氏にお聞きしました。

 

\この方々に聞いた/

(写真左)小林 司氏

株式会社ギャラリー・ド・ポップ 代表取締役


日本の技術やモノづくりを活かした独自の世界観を構築している「pas de calais」「SAGE DE CRET」を運営するファッションアパレル企業代表。国内だけにとどまらず、NYにも拠点を持ち、海外セールスを15年継続して行い、26か国での取り扱いがある。
 

(写真右)鬼熊 みどり氏

株式会社ギャラリー・ド・ポップ PR担当


 

株式会社ギャラリー・ド・ポップ コーポレートサイト http://www.galeriedepop.com/
「pas de calais(パドカレ)」オフィシャルサイト http://www.pasdecalais.jp
「SAGE DE DRET(サージュデクレ)」オフィシャルサイト http://www.sagedecret.jp
オンラインストア https://www.store.galeriedepop.com/ ★2023/8/10 オープン!

―25周年おめでとうございます。四半世紀という期間を振り返り、「pas de calais」をスタートしたきっかけと、ターニングポイントについてお聞かせいただけますか?

小林氏:

 「pas de calais(パドカレ)」は1998年に平成ブランドブームの中でスタートしました。当時、10代後半~20代前半をターゲットにしたブランドが主流の中、私自身が30代~40代をメインターゲットに日常的に着られるブランドを作りたいという想いを強く抱いていました。そして、フランス視察先でファッションや文化に感銘を受けたことをきっかけに、北フランスのパ・ド・カレ地方にちなんで、その地域に暮らす人々の自然に開かれたライフスタイルをコンセプトとするブランドとして「pas de calais」を立ち上げました。ブランドデビュー当初からありがたいことに大変好評を得まして、通常は狭き門である百貨店を含め5、6店舗の展開が決まり、なんと初年度から黒字でスタートすることができました。

 

pas de calais」2023AWカタログより

 

 ブランドの大きなターニングポイントは2015年、パリのマレ地区に店舗をオープンした時期です。この年は、同時にリブランディングを行いました。従来の30代~40代のメイン顧客層をアッパー層へと引き上げることにしたのです。その背景には、当時の国内の男女賃金格差や派遣雇用の増加などといった社会的要因の影響や、若者向けのファストファッションの普及がありました。「pas de calais」は、私たちが作る商品や世界観に共感を示してくれる、アッパー層をターゲットにしたい。それは、これまでDCブランドやインポートブランドなどに触れてきて「商品」の善し悪しが分かる層です。

 そして、この機に価格と出店先を一気に刷新しました。クオリティやコストをコントロールできるよう商品は100%日本製を目指して生産工場も変更し、出店フロアにもこだわり、店舗の内装やショッパーなども一新。さらに、顧客サービスや売上データ分析を強化するため、顧客データを電子化し、お客様一人ひとりの購買履歴をすべての店舗で確認できるようDXを推し進めたのもこの時期です。

 

pas de calais」パリの店舗

”継続は力なり” 世界の一流バイヤーとともに歩んだ15年間

―価格や店舗含めてリブランディングする中で、変わらず国内外からブランドが支持されてきた理由や強みは何だと考えますか?

小林氏:

 実は、ブランドを運営し10年が経過した2008年がもう一つのターニングポイントなのですが、当時、海外生産に関わるさまざまな問題や、国内の流行に即した商品展開が求められるような状況下で、このままでは当初のブランドコンセプトや軸から逸脱していってしまうのではないかという危機感が生まれたのです。そのような中、同年秋にニューヨークの合同展示会に出展し、オーダーを得たことで海外展開への挑戦を本格的にスタートしました。

 海外のセレクトショップは、オーナー自身がバイヤーとして来展し自ら商品を選びます。弊社でもこれまで名だたる一流バイヤーから直接受注を受けました。彼らはブランドのコンセプトや方向性がブレないよう、直接、商品やクオリティに関する鋭い指摘をしてくれます。「pas de calais」では、そうした指摘のもと、全ての商品を一流バイヤーが納得できるクオリティに合わせて高め続けてきました。その結果、ブランドがより世界レベルへとブラッシュアップされていったのだと思います。そして2010年、念願だった米国の高級百貨店「バーニーズニューヨーク」の5階フロアでラグジュアリーブランドと肩を並べての出店が叶ったときは感動しましたね。その後は2018年の同百貨店の閉店まで毎シーズン欠かさず受注を貰いました。

 私たちは15年ほど海外展開を行っていますが、重要なのは継続していくことと、世界レベルの感度やクオリティを常に追求することです。自分たちの努力次第で商品をブラッシュアップすることで海外では多くのチャンスを掴んできました。また、2013年にはニューヨークのソーホー地区に、2015年にはパリの北マレ地区に直営店舗をオープンしています。当時より、海外のプレスからブランディング強化に関する助言を頻繁に貰い、ブランディングにおいて重要なのは店舗だと考え出店しました。結果、世界のファッションの中心であるニューヨークとパリの店舗を通じて、お客様への効果的な宣伝になっていたと思います。

 

pas de calais」ニューヨークの店舗

なるほど、常にグローバルスタンダードを追求されてきたのですね。海外での店舗展開は現在どのような状況ですか?

小林氏:

 現在は26カ国140社の百貨店、セレクトショップにホールセールを行っております。売上構成としてはカナダやアメリカなどの北米が36%、ヨーロッパが33%、アジア・オセアニアが31%ぐらいというバランスです。アジアは香港、韓国、台湾、ベトナムを中心に販売しています。海外の購買層は国内とほとんど同様ですが、海外は特にアメリカ西海岸やフランスのニースといったリゾート地での売上が好調で、より洗練された顧客層に日常着として着用してもらっているのが特徴的です。

 また、2018年には北フランスのパ・ド・カレ地方にある、ルーブル美術館ランス別館(Louvre Lens)から声がかかり、20周年記念としてコラボレーション商品を発売しました。これは、ランス別館とその周辺の観光促進や伝統産業の発展、地域振興を目的にしたプロジェクト 「ALL (Autour du Louvre Lens)」の一環です。「ALL」が海外企業とコラボレーションをする世界初の試みとして「pas de calais」が選ばれ、日本の複数の百貨店と、フランスでは56か所で共同のポップアップストアを開催しました。これもパリでブランディングのために出店した一つの成果です。

 

ルーヴル美術館ランス別館とコラボレーションをした際のコラボストール

 

京ミッドタウンで行ったコラボレーションポップアップストアのディスプレイ

“ブランド”とは、顧客を飽きさせない”驚き”だ。 トレンドに流されない「生き方」を創る

―小林代表が考える「ものづくり」や「ブランディング戦略」についてお聞かせいただけますか?

小林氏:

 私たちは長年、取り扱うカテゴリー軸や顧客層がしっかりと定まっている海外バイヤーと仕事をしてきました。そのため、「商品」が絶対に一番重要だと考えています。コロナ禍から現在までの間に48%の値上げをしましたが、売上は落としていません。コスト削減を考えるとどうしても化学染料や合成繊維、海外生産を選択しがちですが、弊社では綿やウールなどの天然素材や日本製へのこだわりを徹底し、お客様もそこにしっかりと価値を感じてくださっています。

 「pas de calais」は「ブランド」でありたい、と思っています。私たちが考える「ブランド」とは「驚き」です。立ち位置の定まった芯のあるブランド戦略を進めるためには、毎シーズンにおいてお客様を飽きさせない「驚き」と、「不変の価値」を常に追い求めることが重要だと考えます。例えば、「クリスタル染め」「石染め」「バオバブの樹液で染めた布」と聞くとお客様は驚かれます。ブランディングの一つとして、自然の中にあるさまざまな染めの技法を通じてお客様に「驚き」を伝えていきたいと思っています。

 決して市場の消費トレンドに流されずあくまでも商品本位にこだわりたい。なぜなら私たちが作っているものは言うなれば「生き方」だと自負しています。「トレンドを追うのではなく頑張らない。自分の『生き方』の表現手段として使い捨てではない価値あるデイリーウエアを見極める」そんな本質を大切にするお客様に選んでいただきたいと考えています。

 

「pas de calais」2023AWコレクションより

25年間をともに歩んでくれた顧客に「感謝」を伝える1年に

―リブランディングを経て、今年の25周年は、お客様に向けどのようなことを企画していますか?

小林氏:

 メインテーマは「LOVE-愛-」です。というのも、昨今は戦争やパンデミックによる先の見えない社会情勢やさまざまな分断が続いていますが、ファッションを楽しむためには平和が不可欠ではないでしょうか。そのために重要な「愛」をお客様に感じてもらおうとメインコンセプトに設定しました。より多くのお客様に「pas de calais」や「SAGE DE CRET」を知っていただき、また、これまで支えてくれたお客様にとっても新しい驚きや楽しみ、感謝を伝えていきたいというのが25周年記念の大きな目的です。

鬼熊氏:

 具体的には、今年の8月から約1年間、四季を通じてお客様に楽しんでいただけるさまざまなイベントを企画しています。サブテーマとして2023 AWシーズンは「LOVE-心-」、2024SSシーズンは「LOVE-ありがとう」を設け、通年で、「カスタマイズオーダー」「オーダーノベルティフェア」「ポップアップショップ」など特別な企画を用意しています。

 オーダーノベルティの内容には、50万円以上購入いただいた方を対象にオリジナルオーダーした作家によるフラワーベースなど、グレードアップした企画もあります。また、近年海外売上が好調なメンズブランド「SAGE DE CRET」と「pas de calais」がコラボし、メンズアイテムをサイズダウンしたレディース服を、期間限定で「pas de calais」直営店にて展開予定です。

また、新しい遊びのある試みとして、「25周年のハートのモチーフ」を制作しています。商品だけでなくショッパーや商品タグなど各所で展開し、お客様に愛着やポップさを感じていただきたいと思っています。

 

「pas de calais」の25周年限定モチーフ

 

【25周年アニバーサリーイベント概要】 

オーダーノベルティイベント

 

<ノベルティ例>
50万円お買い上げ 対象ノベルティ:作家「柏井 羊」さんのオリジナルフラワーベース
(本件の為にオリジナルオーダーしたフラワーベースをブランド刻印入りの桐箱に入れてお渡し)他

カラーオーダーイベント

 

「pas de calais」の代名詞ともいえる「染め」アイテムを、4型(ブラウス2型・ワンピース1型・スカート1型)からお選びいただき、お好きな染め方法でオーダー、約2.5か月後にお渡しするイベント。

■「SAGE DE CRET」コラボレーション “SAGE DE DRET pour pas de calais”

  • 販売期間 : 2023年10月18日~
  • 販売場所 : 「pas de calais」直営店

■ポップアップショップ

  • 開催期間 : 2023年9月中旬~
  • 開催場所 : 全国主要百貨店にて

 

※上記イベントに関するお問い合わせ・詳細は各イベント特設ページ及びオンラインストアをご参照ください。


創業時から”ブレない”軸のあるブランドをこれからも継続する

―さいごに、今後の展望をお聞かせください。

小林氏:

 私は、毎回1点1点の商品をデザイナーと共にすべて確認します。この先も商品をさらに練り上げ、日本を含め世界中の人たちに「pas de calais」や「SAGE DE CRET」をもっと好きになってもらい、お客様を増やしたいというのが5年後、10年後の目標です。私たちの狙うマーケットはとてもニッチですが、それを拡げようとすると作りたくないものまで作らなければならない。売上のためにコンセプトや軸がブレてしまうなら売上規模はそこまで大きくならなくていいと思っています。とはいえ、売上を気にしないわけではありません。売上はお客様からの支持だと捉えますので、今後もお客様に喜んでもらえる商品を作り、その結果として、社員の幸せに繋がってほしいと思っています。

 そして、今年は25周年ということで、リブランディングの完成形を目指したいとも考えています。納得できる“良いところ”を目指して、ECサイトやウェブサイト、そして重要なチャネルとしてターゲット層が好む「カタログ(紙媒体)」もブラッシュアップし、こだわりが伝わるものにしていかなきゃいけないと考えています。

【編集後記】おわりに

 今回は、恵比寿・代官山エリアに位置する同社ショールーム兼オフィス内の社長室にて取材させていただきました。ブランド名の由来であるパ・ド・カレ地方の絵画や写真、そしてフランス人作家が手掛けた陶器が並ぶ小林代表こだわりの洗練されたスペースは、編集部メンバーに心地よい刺激を与えてくださり、とても素敵な空間でした! 

 記念すべき25周年。取材に向け、社歴など事前にたくさんご準備いただき、ブランドの“これまで”を一つひとつ丁寧に紡いでくださった小林代表。「僕は本当にファッションが好きで、この仕事をはじめたんですよ」と、創業時から変わらず持ち続けるファッションへの熱い想いが、大変印象的でした。その想いはブランドや商品、そして社員にも浸透し、全員が一丸となってブランドを創っています。

「ある一定のレベルを求めるので、メンバーは少数精鋭で、気付いて見渡すとベテラン揃いですよね(笑)。そうじゃないと、このレベルのブランドは作れません。ですので、それを見て『私もやりたい』という若い方がいれば、ぜひ参加してもらいたいですね」

 ベテラン勢を引っ張る小林代表はまた、「僕がいつも最終判断軸を担おうと思ってるんです」とも語っていました。トレンドや時流に流されることなく品質を追求し、お客様に「生き方」を提案しながらともに25年間を歩んできた「pas de calais」。来週よりいよいよ店舗とオンライン双方でスタートする25周年記念イベントでは、お客様とどのようにエンゲージしていくのでしょうか、「pas de calais」の“これから”のさらなる進化にも注目していきたいと思います。 (AIL編集部 小川)


取材協力

株式会社ギャラリー・ド・ポップ 
代表取締役 小林 司氏
PR担当 鬼熊 みどり氏
http://www.galeriedepop.com/

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