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NRF2025リテールズビッグショー視察レポート AI話題に引き続き注目 Walmart(ウォルマート)×NVIDIA(エヌビディア)対談【NRF 2025 REPORT】

全米小売業協会(National Retail Federation、通称「NRF」)が主催する、世界最大規模のカンファレンス&エキスポ「NRF 2025: Retail’s Big Show(NRF 2025:リテールズ・ビッグ・ショー)」。今年もニューヨーク市内のジャビッツコンベンションセンターで2025年1月12日~14日の期間に開催されました。1911年から毎年続く歴史ある同イベントには、今年も世界中から多くの参加者が集まりました。
会場の様子 ©NRF Big Show 2025 – Jason Dixson Photography
今年のカンファレンスのメインテーマは「GAME CHANGER(ゲームチェンジャー)」。
最新のテクノロジー、ビジネスモデル、マーケティング、カスタマーエクスペリエンス、MD、運営、そしてビジネスを支える人材テーマに至るまで、“それらの重要なトピックスを変えていく”ヒントが詰まったイベントとなりました。筆者が同展を視察した中で、特に皆様に共有したい今年のリテールトレンドをレポートしていきます。
数字で見るイベントハイライト「NRF 2025:Retail’s Big Show」
- ✅40,000人を超える来場者
- ✅6,200 を超えるブランドが参画
- ✅450名のスピーカーによる175以上のキーノートセッション(大手企業のCEOが登壇するメイン講演)やセッションを開催
- ✅1,000を超える出展者が最先端のテクノロジー、小売サービスを展示・紹介
「NRF 2025」リキャップ動画(公式サイトより)
3日間にわたるカンファレンスの開会式では、NRF会長兼Walmart U.S.(ウォルマートU.S.)社長兼CEOのJohn Furner(ジョン・ファーナー)氏が登壇し、会場から溢れる程集まった参加者へ歓迎のメッセージを送りました。
もっとも注目を集めたのが、昨年に引き続きセンターステージとなった「AI」の話題。最初のキーノートセッションでは、世界的半導体メーカーのリーダー格、NVIDIA(エヌヴィディア)のバイスプレジデント兼リテール担当ジェネラルマネージャーのAzita Martin(アジタ・マーチン)氏を迎え、ファーナー氏との対談が行われました。
ファーナー氏は、AIの取り組みにおいて、企業がそれぞれの異なるフェーズにあり、さまざまなサービスがあるAI領域では、一体何から取り組みを始めるべきなのか?とマーチン氏に問いを投げかけました。NVIDIAのマーチン氏はそれに対し、「まず始めることです」とシンプルに回答。その理由には、Eコマースが登場した時代を例に挙げ、いち早くEコマースにアダプトして行動を取った企業は業界のリーダーとなっていると説明し、企業のエグゼクティブたちがAIについてまず信じることや、そのイニシアチブにおいて、トップドリブンとなり取り組んでいくことが重要だと強調していました。
自身のビジネスの中でどういった部分に苦戦しているのかを理解し、AIを試していく、活かしていく。基本的なことではありますが、筆者の心には強く刺さった言葉でした。
「NRF 2025:Retail’s Big Show」開会式
NRF会長兼Walmart U.S.社長兼CEOのJohn Furner(ジョン・ファーナー)氏による開会の挨拶(NRF公式YouTubeチャンネルより)
John Furner(ジョン・ファーナー)氏と、NVIDIAバイスプレジデント兼リテール担当ジェネラルマネージャーのAzita Martin(アジタ・マーチン)との対談動画
「Reinventing Retail with AI」(NRF公式YouTubeチャンネルより)
NRFでは、パリを拠点に置くイベントオーガナイザーであるComexposium(コエキスポジウム)と共に、昨年初となるアジア太平洋圏の「Retail’s Big Show Asia Pacific(リテールズビッグショー・アジアパシフィック)」をシンガポールで開催。来場者数5,500人、109名の登壇者、出展数238社と、なかなか好調の滑り出しでした。2025年も、6月3日~5日の3日間、シンガポールのマリーナベイサンズ会場にて開催が決定しています。
「Retail Unlimited(リテールアンリミテッド)」をテーマに、NRF2025 APACでは、顧客エクスペリエンスの強化からデジタル変革戦略に至るまで、小売業の無限の可能性にスポットライトを当てます。
「NRF 2025: Retail’s Big Show Asia Pacific」イメージ動画(NRF APAC公式YouTubeチャンネルより)
2025年はここでは終わりません。これまでNRFとComexposiumで共催してきた「Paris Retail Week(パリ・リテールウィーク)」のカンファレンス&エキスポをリブランディングし、「NRF 2025: Retail’s Big Show Europe(NRF 2025:リテールズビッグショーヨーッロッパ)」として再出発します。イベントは、Paris Porte de Versailes(パリ エクスポ ポルト ド ヴェルサイユ)のパビリオンを会場に、9月16日~18日の3日間開催されるそうです。
ここから、筆者が特に注目した今期の「NRF 2025: Retail’s Big Show」の視察ポイントを紹介していきます。会期中は、いくつかのセッション聴講や出展社との情報交換を行いました。
- 1. 実施された175以上ものセッションの中では、今年も引き続き「AI」が話題の中心に。とりわけ、その中でも「Agentic AI(エージェンティック AI)」という言葉を口にする人々が多かった印象。セールスフォース社が提供する「Agentforce」のサービスにも注目しておきたい。
- 2. 現地メディアでも報じられたが、この数年耳にしてきた「インクルーシブ」や「ダイバーシティ」というような言葉をテーマとしたセッションタイトルは今回見られなかった。また「サステナビリティ」という言葉も耳にする頻度が低かったように感じた。しかし、サステナビリティに関しては、関心が低下したのではなく、トピックスのセンターステージから外れたまでで、ブランドの環境へ対する取り組みが減少したわけではないと思う。
- 3. 販売チャネルといえば「店舗」「EC」「直販・ホールセール」が中心だったが、近年はさまざまな「マーケットプレイス」「ソーシャルコマース」など、チャネルが拡大・複雑化している。RFIDなどを活用した在庫管理の重要性も感じる。店舗において、顧客がスムーズに買い物を完結し、一方で、店舗スタッフの負担を軽減し対応し得るためには、ブランドはどのようなサービスを試すべきなのか。
冒頭でも触れた通り、「NRF 2025 Retail’s Big Show」はその名の通り、会場も広大で、セッション数もエキスポ出展数も“ビッグ”です。そのため、参加者、そして取材メディア各々がそれぞれの視点を持って参加し、さまざまな意見や発見を持ち帰ることができる点が最大の魅力です。
NRF公式YouTubeチャンネルでは、キーノートセッションやスピーカーのハイライト動画がまとめられているので、是非チェックしてみてください。
執筆者
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RINA Yoshikoshi|AILメディアパートナー
NYC在住ブランド、テクノロジー系ライター / コンサルタント
NYを拠点にブランド、リテール、ウェルネス、D2CのCPGブランドの現地市場を調査。店舗で導入される最新テクノロジーや米国での先進事例なども研究。執筆活動、リソースを元にしたマーケティング&ビジネスコンサルティングやアドバイザリーも行う。
関心: #ファッション #フィットネス #ウェルネス #スーパーマーケット+CPG