過去20年間に渡って中国にデジタル社会の加速をもたらした中国三大IT企業である「天猫(Tモール)」「淘宝網(タオバオ)」などを運営するアリババグループ、「JD.com(京東商城、ジンドンショウジョウ)」を運営する京東集団、「WeChat(ウィーチャット)」などを運営するテンセントグループ。彼らの最新動向と、驚きの取り組みを紹介していきます。
“エイプリルフールのネタ”ではない「ロケットで世界中どこでも1時間以内配送」アリババの本気と野望
2024年3月31日、中国のネット上で驚きの投稿が注目を浴びました。それは「アリババがロケットを使用し、世界中どこでも1時間以内に配送する」というSNS投稿。当初はエイプリルフールのネタだと多くの人が嘲笑していましたが、その翌日、アリババグループが同社の「Weibo(ウェイボ)」公式アカウントで「素晴らしいことは最初は冗談のように思える」と返信。つまり、このロケットによる配送は偽情報ではなく、エイプリルフールのネタでもない、本気の取り組みだと発表されたのです。
『エイプリルフールに冗談ではなく、タオバオが民間企業と協力してロケット「宅配便」を開発した』
4月1日に「百度」に投稿されたニュースより
嘘のような本当のこの取り組みは、アリババグループと中国の民間宇宙輸送サービス会社、北京箭元科技有限责任公司(北京Arrowyuan Technology、アロー・テクノロジー)との提携により、実験段階に入っているといいます。再利用可能なロケット技術で、原則、世界中どこへでも「Tモール」や「タオバオ」での注文後一時間以内の速達配送を実現するというものです。
また、年内には初回の飛行実験を予定。越境ECのみならず、今後は「SpaceX(スペースエックス)」と対抗するための布石として、宇宙輸送を軸とした国際インフラ事業推進に向けた大きな一歩を踏み出したといえるでしょう。現地の試算では、順調にいくと3~5年程度で一般利用が可能になるといいます。アロー・テクノロジー社によると、この提携を通じて従来の物流業界に新たな発展の機会をもたらすだけでなく、中国の民間航空宇宙産業の発展の加速にも貢献すると主張ししています。
アリババグループをはじめ、昨年は「JD.COM」を運営する京東集団の物流サービスも海外現地向けの物流サービスをローンチ。このように、中国越境ECプラットフォームは、次の成長戦略としてインフラ拡張を進め、自社のグローバル競争力や優位性を高めていく狙いがうかがえます。ロケットによる荷受けは、果たしてどのように行われるのでしょうか。近い将来、EC配送欄の選択肢に「ロケット配送」が出現する未来もそう遠くないかもしれません。
参照:
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1795137164530640936&wfr=spider&for=pc
生成AIで作られた「JD.COM」CEO ライブコマースで10.6億円の売上を記録
2024年4月16日、「JD.COM」CEOの劉強東(リチャード・リウ)氏のイメージで生成AIによって作られたデジタルヒューマンが同社のライブコマースに登場。本物と見間違えるほどの高いクオリティで生成されたAIデジタルヒューマンによるライブ配信は、ライブ開始1時間で2,000万もの同時視聴者数を記録し、最終的には約5,000万人民元(約10.6億円)の売上を達成したことで話題になっています。
生成AIで作成された「JD.COM」CEOの劉強東氏のライブ配信の様子。
細やかな表情や手の動きも見事に再現されている
一部のユーザーは、「生身の人間」だと疑わなかったと称賛。特に、外見にとどまらず、表情、姿勢、生き生きとした会話やジェスチャーは、まさに本人を100%復元したような自然さだったと評価されています。
「JD.COM」は今回の実証実験に向け、50,000時間にも上る劉氏の映像や音声データを独自のLLMの学習モデルに組み込んだことで、高精度の再現に成功したといいます。ほとんどのユーザーが120秒以上視聴してもデジタルヒューマンであることを検出できなかったという結果も出ています。まるでクローンのように精巧なAIデジタルヒューマン。この技術がインフラと化し、ライブコマース以外の場で日常的に活用されるような日が訪れるかもしれません。
参照:
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1796558569271019938&wfr=spider&for=pc
参考記事:
席捲する中国発グローバル越境EC 次なる市場とは【編集部厳選:ホットトピック】