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AILイノベーションノートVOL.1|創業半世紀の企業DNAをDX推進でさらに進化 「ササビーリーグ」が目指す次の顧客体験

AIL編集部
AIRVol.63転載記事
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 会員企業様のイノベイティブな取り組みを紹介する「AILイノベーションノート」。取り組みから見えてくるヒントをAILコミュニティで共有し、次のビジネスチャンスを探っていきたいと考えています。

 第1回でご紹介するのは、ファッション、生活雑貨だけでなく、フードやビューティといったライフスタイル領域全般を手掛ける「サザビーリーグ」。今年で創業50周年を迎えた同社は、デジタル領域でもさらに進化するため2022年4月にDX推進室を新設しました。そこでDX推進室設立の背景、組織・運営状況、今後の展望などについて、執行役員 DX推進室 室長 兼 営業統括ECブランド事業部 事業部長の相川慎太郎氏にお話を伺いました。

 

相川 慎太郎 氏 
サザビーリーグ 執行役員兼 DX 推進室 室長 営業統括 EC ブランド事業部 事業部長

2016 年 4 月「サザビーリーグ」入社。DX 推進室にて、 EC サイト構築・運営支援、データ活用、SNS 活用を含むデジタルマーケティング支援を担当。2018 年 4 月よりスタートした同社初となる D2C ブランド「ARTIDA OUD(アルティーダ ウード)」を運営する EC ブランド事業部も兼任。
 
「ササビーリーグ」公式サイト:https://www.sazaby-league.co.jp/

―はじめに、今年4月に立ち上がった「DX推進室」について教えていただけますか。

相川氏:

 当社ではさまざまな課題解決に取り組み、DX領域を推進していく部署として2022年4月に「DX推進室」という部署が立ち上がっております。コロナ禍ということもあり、小売やファッションビジネスはこれまでのような右肩あがりの成長はあまり期待できない中、加えて人口減もあるので何もしないと市場としては縮小していってしまいます。そこから抜け出すルートの探究という意味でこの部署は立ち上がりました。

 それに加えて、当社らしいデジタルの推進や既存のマーケティング手法の見直し、ブランド毎に最適なECへのチャネルシフトの実現を目指すのが部署の役割です。その内容は大きく分けると3つになります。データ活用、販売スタッフのデジタル化、動画活用とマーケティング・コミュニケーションの場としてのSNS活用です。

 

「ササビーリーグ」で取り扱うファッションブランド

―「DX推進室」は相川さんを含めて今、何名が在籍されていますか?

相川氏:

 自分を含めると13名ですね。「DX推進室」は大きくデジタルマーケティング部とデジタルコマース部に分かれています。デジタルマーケティング部ではデータ活用をCRM課が担当、販売スタッフのDX推進やSNS活用はデジタルコミュニケーション課が担当しています。そして既存のEC運営の支援や新規ECサイトの構築支援についてはデジタルコマース部の企画支援課が担当しています。

―データの活用というと、いわゆるMAツールの導入でしょうか?

相川氏:

 はい、もちろんこれまでもデータ活用は行っていましたが、ブランド単位での活用や店舗での購買データを分析した上でのお客様へのアクションやECサイトでの行動を捉えた上でのアプローチが主でした。しかし、今期からはCDP(Customer Data Platform)を導入し、リアルとデジタル双方のデータを活用していく狙いがあります。CDPでは「TEALIUM(ティーリアム)」という米国発のツールを活用し、データを集め、さらにマーケティングオートメーションの仕組みをつなげて、リアルタイムで顧客とコミュニケーションを取るという形です。

―続いて「販売スタッフのデジタル化」というのは、いわゆるデジタル接客に実際のスタッフを投入する取り組みですか?

相川氏:

 現在進めているのは“LINE STAFF START”ですね。販売スタッフに会社が公式に認めたLINEのアカウントを発行し、それを使って店舗外でもお客様とLINEでコミュニケーションを取る取り組みを徐々にスタートしています。

―なるほど。最近では他社でも同様の取り組みをしているところも多いと思いますが、御社ならではのこだわりはありますか?

相川氏:

 当社は比較的高単価で顧客ロイヤリティが高いブランドを展開していますので、店舗でお客様と接客を通して構築していた関係性の深いコミュニケーションを、LINEやメールを使って行うという形です。顧客接点を深く構築しているスタッフとお客様に対して、店舗の外でもよりコミュニケーションを取ってもらうことを目指しています。まだ、全ブランド、全スタッフにアカウントを発行しているわけではなく、すでに顧客を持っている販売スタッフや優良顧客層が厚いブランドで、トライアルで取り組みを始めています。

―動画活用とマーケティング・コミュニケーションの場としてのSNS活用については、Instagramが中心でしょうか?

相川氏:

 主にInstagramにはなりますが、まずは今自分たちが運営しているアカウントの分析を統一のツールを使ってやろうと思っています。フォロワー分析や投稿分析などを統一の指標やツールを使って行うことで、自分たちの今の置かれている状況を分析しようということです。

 あとは中国向けの越境ECも少しずつチャレンジしています。いわゆるモール型の越境ECではなく、WeChatなど中国版のSNSを活用し、海外のKOL(Key Opinion Leader、キーオピオニオンリーダー:専門知識をもとに発信するユーザーで、中国や台湾などアジア圏における購買意思決定に影響力を持つ)にショップに来てもらい、そこで商品を紹介してもらって販売する形です。比較的手応えもあり、一部のブランドでは1回のライブで数百万円の売上を記録したこともありました。

―相川さんが担当しているD2Cジュエリーブランド「ARTIDA OUD (アルティーダ ウード)」のECサイトでは先日、ARによるバーチャル試着サービス「Virtual Try On」が導入されましたね。今後はこういったテクノロジーを活かしたデジタル店舗の構想などはありますか?

相川氏:

 デジタル店舗の構想までは至っていません。いわゆるショールーミング型の店舗という意味では、まさに「ARTIDA OUD」の店舗がデジタルを介した仕組みで、サンプルを見てECで購入するというスタイルになっています。D2Cで販売しているということもありますが、社内的に「ARTIDA OUD」はARやショールームの体験型店舗、カスタマイズコンテンツのあるECサイトなど、実験的にいろんなことを試すブランドという位置付けです。

 

バーチャル試着ソリューション「Tangiblee」のサービス。
「Virtual Try On」を導入したジュエリーブランド「ARTIDA OUD

―最後に、今後の展望についてお聞かせください。

相川氏:

 前述したように、まず主力ブランドからCDPを活用し、お客様のニーズなどを可視化しながら、最後にグループ全体のマーケティング戦略を強化していきます。並行してInstagramやLINEなどのSNSを駆使し、公式SNSアカウントで活躍できる店舗スタッフを育成して、お客様とリアル店舗同様にデジタルにおいてもエンゲージメントを高められるコミュニケーションを取りながら、我々独自のブランドコミュニティを構築していければと思っています。

 


「ササビーリーグ」公式サイト:https://www.sazaby-league.co.jp/

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  • AIL編集部

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