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“活きたマニュアル“で属人化を解決 コニカミノルタジャパンが手掛ける「COCOMITE(ココミテ)」【AILイノベーションノートVOL.11】

AIL編集部
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 会員企業様のイノベーティブな取り組みを紹介する「AILイノベーションノート」。取り組みから見えてくるヒントをAILコミュニティで共有し、会員の皆様と一緒に次のビジネスチャンスを探っていきます。

 第11回でご紹介するのは、複合機などのオフィス製品をはじめ多彩なビジネスソリューションを提供するコニカミノルタジャパン。人手不足や働き方改革が進む昨今、同社は従業員が持つ知見やノウハウを「見える化」し共有するオンラインマニュアル作成・運用サービス「COCOMITE(ココミテ)」を2020年にローンチしました。2023年には「ChatGPT(チャットGPT)」を活用した「AIマニュアル作成アシスト」機能を投入。

 導入社数を順調に伸ばす背景にある人材育成・経営課題や、「COCOMITE」が目指すこれからの時代の人材育成と展望について、事業責任者の中村 圭氏、副部長の川瀬 英梨氏、セールスリーダーの國友 崇氏にお聞きしました(敬称一部略)。

 

コニカミノルタジャパン本社のカフェスペースエントランスで撮影。左から、中村氏、川瀬氏、國友氏

 

(写真左)中村 圭氏
コニカミノルタジャパン ICW事業統括部 ナレッジDX事業開発部
部長 COCOMITE事業責任者


なかむらけい●1977年、佐賀県出身。東京理科大学大学院卒。リコーに新卒入社し、設計開発に5年、ICT分野新規事業開発に7年従事。2015年にコニカミノルタ新規事業開発組織へキャリア入社。「COCOMITE」発起人として2022年からナレッジDX事業開発部長に着任。ゼロワンからグロースフェーズまで事業開発経験多数、アジャイル事業開発を実践し社内外へ発信。

 

(写真中央)川瀬 英梨氏
コニカミノルタジャパン ICW事業統括部 ナレッジDX事業開発部
副部長


かわせえり●1986年、東京都出身。法政大学法学部卒。コニカミノルタ新卒入社後、主に欧米の販売会社に向けてマーケティングや中期計画等戦略の立案、企業買収提案等を経験。後に国内販売会社にて新規サービスのマーケティング組織立ち上げに携わる。2023年より「COCOMITE」に参画。マーケティング責任者兼、多拠点ビジネス向けの新機能開発PJリーダーを担う。

 

(写真右)國友 崇氏
コニカミノルタジャパン ICW事業統括部 ICW営業推進部 ナレッジDX エンタープライズ
セールスリーダー


くにともたかし●1983年、東京都出身。法政大学経済学部卒(体育会アメフト)。ワコールに新卒入社。大手量販店営業・ワコールブランド商品部でのMD・国際本部・販売戦略企画を経験。マネージャーとしてチームビルディングと社内プロジェクト推進に従事。2023年よりコニカミノルタで現職。

 

コニカミノルタジャパン 公式サイト https://www.konicaminolta.com/jp-ja/index.html
「COCOMITE」サービスサイト https://cocomite.konicaminolta.jp/
「COCOMITE」のお問い合わせはこちら 

>>>その他のイノベーションノートトピックはこちら<<< #AIL編集部独自取材

オンラインマニュアル作成・運用サービス「COCOMITE」(公式サイトより)

想定外の反響 ローンチから3年で約3万ユーザーのエンタープライズ顧客を獲得

「COCOMITE」はローンチに至るまで試行錯誤があったと伺いました。一般的なマニュアル運用の背景には、どのような人材育成・経営課題があるのでしょうか。

中村氏:

 前身として多言語マニュアルサービスなどの新規事業の計画をいくつか進めていましたが、お客様のヒアリングをもとにサービス改善に紆余曲折する過程で、そもそもマニュアル自体の作成・管理・運用ができていないという課題があることが分かりました。「COCOMITE」をローンチした2020年はコロナの影響で世の中の働き方が目まぐるしく変化していた渦中だったこともあり、想定以上に多くのお客様に関心を寄せていただきました。

 そこからさらに1年を費やし、エンタープライズのお客様にも対応できるように機能開発・システムの拡張を行っています。その後、ありがたいことに短期間で導入社数が急増し、現在は200社到達が見えてきているところです。

川瀬氏:

 マニュアルには作成者、閲覧者、管理者とさまざまな立場の方が関わるため課題も多種多様です。そこで、「COCOMITE」はまず「マニュアル作成のためのマニュアル」として、既存のマニュアルをもとに必要情報の整理と体系化をお手伝いします。ドキュメント運用のコンサルという形で紙、エクセル、PDFなど、作成・閲覧・管理のフェーズで分断されてしまっているデータの整理と最適なマニュアル体系のご提案も可能です。「COCOMITE」でマニュアルを一元化することで、共有フォルダのマニュアルをローカルに落として閲覧するなど、意図せず古いマニュアルを使用している現場や、マニュアルのフォーマット作成から検討する必要があり、作成自体に辟易としてしまうスタッフがいる状況を解消し、従業員全員に正しく伝わる「教科書」となることを目指しています。

 

「COCOMITE」イメージ図

活きたマニュアル”で働きやすい環境をつくる 社内コンペを開催した例も

既存のマニュアルを全てデジタル化するとなるとハードルが高く感じますが、作成過程やメリットについてお聞かせください。

中村氏:

 オンラインマニュアル作成期間は平均で1~2ヶ月程です。小規模の投資でスタートできるよう、各種プランや無料体験サービスを設けています。作成の際は、最初の1~2週間でお客様と数回打ち合わせた後、生成AIを活用しながらクラウド上にデータを移行して完成させていきます。以前にお客様より「モノは良いけど使いこなせない」というフィードバックを貰ったことから、将来的に自走いただけるよう管理者や作成者に向けた「勉強会」を定期開催し、運用面でも継続的に伴走、サポートしています。

國友氏:

 そもそも、マニュアルの役割は働き方や手順を現場に伝え続けるもので、完成後にしっかりと活用してもらえることが重要です。そのため、完成して終わりではなく、運用現場におけるマニュアル使用状況のレポートや分析も行っています。現場で良くある例が、検索数は多いものの該当するマニュアルがないケースで、実は困っている使用者が多いことに管理者が気付けず、アップデートがされないままマニュアル不足が慢性化するケースです。「COCOMITE」のダッシュボードでは検索頻度の多いワードがランキング形式で「見える化」されるため、マニュアルの新規作成やブラッシュアップをするきっかけになります。

 他にも、使用者のアクセス数や閲覧記録から、管理者は閲覧漏れをリマインドすることも可能です。常に最新版のマニュアルしか閲覧出来ない形なので、版管理の手間なく従来のマニュアルでは難しかった現場の疑問が解消され “活きたマニュアル”として機能します。現場からも“気づき”が生まれるようになりPDCAが回ることも大きなメリットの一つです。

 

「COCOMITE」ダッシュボードのイメージ画面
マニュアル毎の閲覧数や「検索ワードランキング」など、管理者に必要な情報を一覧で確認可能

 

実際の現場では、どのような活用方法が有効ですか?

川瀬氏:

 特に効果的に活用いただいているのは、サービス業、卸・小売業、飲食業など多拠点(多店舗)でビジネスを展開する業態と、製造業の生産拠点、情報通信業など集約型業態の企業と2つのタイプがあります。従業員向けの集合研修や、タブレットが使用できない飲食の調理現場などでは、マニュアルをクラウド上からプリントアウトして使用するケースもありますが、QRコードと併用するなどの運用によって最新版への導線作りができます。また、使用者のリアルな反応が得られる「読んだボタン」や「コメント機能」はSNSのような手軽さもあり好評です。

中村氏:

 飲料製造業のお客様で、従業員がそれぞれ得意な領域にて「COCOMITE」でマニュアルを作成・投票し合い、選ばれたマニュアル作成者・投票者を表彰するマニュアル作成コンペを開催した例もあります。従業員を巻き込みつつ、ナレッジの蓄積とモチベーション向上を同時に叶えた好例です。

國友氏:

 小売の店舗では、従業員の離職率の高さや人材不足により十分な教育体制を整えられないといった課題があります。そこで「人が対応する部分」「ツールでサポートできる部分」と線引きして整理することで、「COCOMITE」が貢献できる点があります。特に、新入社員向けの教育においては、ベテラン社員のOJT一辺倒とならないよう、ツールを活用することで新入社員のスピード感ある成長をサポートし、早期の戦力化を行うことが出来ます。

ニーズを取り入れ定期的なシステムアップデート 最新の生成AIも導入

生成AIを活用した「AIマニュアル作成アシスト」機能はどのように役立っていますか?

國友氏:

 マニュアル作成にあたって重要となるのは、項目の抜け漏れがないかということです。「COCOMITE」ではMicrosoft(マイクロソフト)社が提供する「Azure OpenAI Service(アジュールオープンAIサービス)」を利用し、マニュアル作成時に発生しがちな項目の抜け漏れ防止と工数削減をサポートしています。

 特に、作成者がベテランや経験者の場合に、その経験値や勘から、初心者向けのマニュアル作成過程で必要な項目の抜け漏れが発生することがあります。そこで、誰でも一定の作業や成果を実現できるよう生成AIを導入することで、入力手順や候補を提示して抜け漏れをなくすとともに、マニュアルの作成工数を6分の1程度まで削減しています。「COCOMITE」へマニュアルを移行後、不足しているマニュアルを新規作成する際には、本機能を活用することで質の担保されたマニュアルを素早く量産することが出来ます。

 

「AIマニュアル作成アシスト」機能のイメージ画面(画像左側)

 

「COCOMITE」では毎月のように機能アップデートが行われているとのことですが、今後の展望についてお聞かせください。

川瀬氏:

 30日間の無料のトライアル期間に寄せられた要望を取り入れ、期間内にアップデートした例もあるほど、お客様のニーズはいち早く社内で共有され、優先度を検討した上で必要との判断が下るとスピード感をもって開発・アップデートに取り組んでいます。そのような柔軟性や発展性がクラウドサービスである「COCOMITE」の大きな特徴の一つですので、今後も市場のニーズに沿った細やかな対応を心掛けていきたいと思います。

國友氏:

 マニュアルを運用し、定着させていくのは現場ですから、今後はより若い層に向けたアプローチも進めていく必要があります。これからは、一人ひとりの生産性をどこまで高められるかが求められる時代です。しかし、一人でできることには限界があります。だからこそ企業が「COCOMITE」を通じてチーム力を底上げし、より大きな課題解決に取り組めるような支援をしていきたいと思います。チーム全体が活性化し、会社や業界にも良い影響を与え、結果として、日本全体が元気になるような流れを作っていけたらと考えています。

中村氏:

 「COCOMITE」は、個人が持つ知見をいかに「見える化」して共有し働きやすい環境作りをしていくかを使命としています。企業の成長を伴走しながらサポートできるよう、誰にでも使いやすいクラウドサービスを目指していきます。

【編集後記】おわりに

 レインボーブリッジが一望できるカフェ&ワークスペースを完備した眺望の良い本社オフィスで取材させていただきました。同社のオンラインマニュアル作成ツール「COCOMITE」は、最先端の生成AI導入をはじめ、顧客ニーズを定期的に汲み取り、クラウドサービスならではの迅速なアップデートを実施している点において、魅力かつ他社サービスとの差別化が現れていると感じました。

 「ローンチ3年でエンタープライズ3万ユーザーを獲得」という成長は、デジタル化や人手不足が進む昨今の時勢に即したサービスならでは。アパレル業界店舗での現場経験を持つ國友氏は、”オンラインマニュアルが現場をフォローし、スタッフの効率的な教育や離職防止に繋がる”、”人手不足で回らない業務をツールでフォローすることで、スタッフが本来の力を発揮できるような現場を作っていける”と、実体験があるからこそ感じられるクラウドサービスの可能性を熱弁されていました! 社会課題解決に向けた「COCOMITE」の今後のアップデートや進化に期待です。《AIL編集部 小川》

 


取材協力

コニカミノルタジャパン株式会社
「COCOMITE」
https://cocomite.konicaminolta.jp/
「COCOMITE」のお問い合わせはこちら
 

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